【淫猥病棟番外編】甘い往診#01

「透。お前、春奈ちゃんと旅行に行ってこい。」

「は？」

朝の回診が終わり、田代はパジャマの前のボタンを閉じながらいきなりそう言った。

「お前ここに来てから一度も休んでないだろ。もちろんこの間結婚式を屋上でやってからも、だ。」

黒羽は田代の言葉を無視して、目の前のタブレットを操作している。

「おい、透っ。」

「手の掛かる患者がいるんでな。」

そう言ってタブレットを切り、ベッド横の椅子から立ち上がった。

「誰だ、それは。俺がかけあって……なんだ、その目は。まさか俺だとか言うんじゃないだろうな？」

黒羽の口角が上がる。

「さあ？」

ニヤリと笑い、視線を流すと黒羽は病室を出て行った。
それと入れ違いに京子が入ってくる。

「その顔だと失敗したみたいね。新婚旅行に行かせるの。」

「まあな。」

花瓶を置き、ため息をつきながら田代に向き直る。

「また正面切って"旅行に行ってこい"とか言ったんでしょ。」

「うっ。」

まるで"図星です"と言わんばかりの田代の挙動に、京子は先ほどよりも大きいため息をついた。

「黒羽先生が頷くわけないじゃない。もう……絡め手とかないの？」

「面目無い……。」

田代がしょんぼりと言うと、京子はクスッと笑った。

「ちょっとここの師長に相談してみるわ。」

「さすが元師長！頼りになる～………すみません。」

京子がジロッと睨むと、田代は肩をすぼませ小さくなった。



「往診、ですか？」

「そう。悪いんだけど、黒羽先生と一緒に出向いてくれるかしら？」

ナースステーションで師長に声をかけられ、春奈はその横のカンファレンスルームで看護師長から往診の依頼を受けた。

「珍しいですね、往診って。」

「そうなのよ。ただうちの病院なの恩人ともいう人なので、ぜひ黒羽先生にお願いしたいの。なので春奈さん、一緒に行ってもらえるかしら？」

師長は顔の前で手のひらを合わせ、拝むように春奈にお願いをする。ふだん何かにつけて世話になっている春奈はもちろん断らない。

「わかりました。いつ伺えばよろしいでしょうか？」

「急で悪いんだけど、明日いいかしら？」

にっこりと笑う師長に、春奈は驚きつつも首を縦に振る。

「春奈さん、今日は日勤よね？早めに帰って荷造りしてね。」

「荷造りって……。日帰りじゃないんですか？」

春奈はさらに目を丸くして尋ねると、師長はさらににっこりと笑い頷いた。




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こんにちは、まぬかんです。
お久しぶりです～

コメントありがとうございます。
たぶんご心配をおかけしました……ですよね？

一区切りついて気が抜けたというか、なんだか何も降ってこなくって。

そこでふと、思い出したのですよ。
前に「クロと春奈のスピンオフは、たぶん祐介が幸せになるまで書かないし書けない。」とか言っていたことを。

そうか、今が書くタイミングなのかなーって思って、見切り発車してみました。

久々のクロと春奈がメインのお話。
ニヤニヤしながらお付き合いいただければうれしいです～(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ

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