すっぴん代議士とフェチ男たち#07~臨場~
ゆう子は明らかに嘘をついている。
なんだってあんなバレバレの嘘をつく必要があるんだ?
「あ。」
テーブルの上にゆう子の携帯がある。
携帯をわすれていくなんて、どれだけ取り乱しているのかがよくわかる。
ん?
携帯のストラップが灰皿の下に潜り込んでいる?
俺はハンカチを取り出し、灰皿をハンカチ越しに掴み持ち上げた。
「・・・」
灰皿の下からは無残に潰された発信装置がでてきた。
ゆう子、お前けっこうヤバイ所に脚を突っ込んでるんじゃないか?
俺は自分の携帯を取り出し、ある人物に電話をかけた。
相手は電話に出ない。もう一度掛け直すとスリーコールほどして、相手が電話に出る。
「なんだよ、ジョー。今、臨場中なんだ。急ぎか?」
俺はついている。
「ザキさん、そこのヤマ、後どれくらいで終わる?」
「んー?あと、十分ぐらいかな。いまはもう撤収作業に入ってる。」
ますますついている。
「だったらさ、ザキさん。コーヒー飲みに来ないか?おごるよ」
「気持ちわりい。なんか高くつきそうなコーヒーだな。」
電話の向こうでザキさんが顎の無精髭を撫でながらニヤついている顔が想像できる。
「そんなことない。ただ、ついでに鑑識セットもってきてくれ。」
「かー。そんなこったろうとおもったぜ。どこだ?俺は次はどこにリンジョーすればいい?」
二十分ほどして、ザキさん---鑑識課のチーフである山崎さんが喫茶店に現れた。
よく日焼けしてジェラルミンケースを肩からかけている姿は、まるで写真家のようだった。
しかしソレと明らかに違うとわかるのは、紺色の作業着に、腕に巻いた『鑑識』という文字が目立つ黄色の腕章。
ザキさんは店員にアイスコーヒーを二杯頼むと、俺の横に座った。
よくわかってる。
「で?目の前のコレを調べればいいのか?」
さすが、よくわかってる。
「先生、お早いお帰りですね。」
事務所で事務員の子に声をかけられた。
「ええ。午後からの会議がなくなったのよ。特に陳述の予定も入っていないようだってら、今日は帰ってもいいかしら?」
我ながら珍しいことを言ったと思っている。
ちょっと自分に驚いた。こんな時間に帰るなんて言ったのは初めてだった。
私以上に事務の子が驚いている。
「わかりましたっ。すみません。まさかお帰りになるとは思わなかったので、車の手配をしておりません。至急手配いたしますので、少々お待ちいただけますか?」
正直な子だと思った。
「あなた、お名前は?ごめんなさいね。わかっていなくって。」
その子、二十代後半といった子だろうか。爽やかでソコソコ顔がいい彼は、ニコッと笑って答えた。
「最近入ったばかりですので。バイトの吉見と言います。ヨシと呼んでください。」
うん。礼儀もなかなかただしい。
なんか少し癒された気になって、笑顔で答える。
「こんな明るいうちは車はいいわ。電車で帰るわよ。じゃあ、ごめんなさい。先に上がらせてもらうわね。」
「はいっ。お疲れ様でしたっ。」
ヨシは慌てて立ち上がり頭を下げようとする。
目の前にあるパソコンのモニターに、思い切り頭をぶつけた。
「いってー」
私は笑いを噛み殺しながら、ヨシを気遣う。
「ヨシ、大丈夫?すごい音がしたわよ。」
ヨシは片目をつぶりながらバツが悪そうに顔をあげた。
「先生…、思いっきり顔が笑ってます。」
え?そうかしら?
「でも・・・先生に名前を呼んでもらって、うれしいです・・・・。」
そういってヨシが甘い顔になり、私の目を覗き込む。
急に変わったその色気のある姿に、少しドキンとしながら、笑ってごまかす。
「じゃぁ、お先にねっ」
私は事務所を後にした。
しばらく歩くと地下鉄の駅があり、そこから電車に乗る。
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