妄想彼氏#11~苦しげに軋む背中~
その刹那、遥は確かに見たのだった。
達也の背中が苦しげに軋んでいたのを。
そして心を引きちぎるかのように鎖を断ち切ったことを。
遥は考えるよりも先に体が動いていた。
がちゃがちゃっと側溝の蓋を開けようと上下左右に揺する。
金属の蓋の裏側。尖った箇所が遥の指に喰い込み傷つける。
しかし遥は構わず蓋を揺すり続け、とうとう蓋を外した。
「どこ?どこ??」
スマートフォンのライトを溝の暗闇の中照らす。キラッと何かが反射する光が見えた。
意外に深いその溝に向かって、遥は地面に手をつき手を伸ばす。
なかなか届かず思いっきり手を伸ばしたところ、溝の淵にかけ体を支えていた手がズルっと滑った。
「遥っ」
我に返った達也が慌てて手を伸ばす。
遥の腕に触れた達也の左手は、遥を掴むことなく、遥はそのまま溝に落ちた。
「遥っ。無事かっ?!」
達也が溝を覗くと、溝の底で尻餅をついた格好で遥が座って照れ臭そうに笑っていた。
「あはは。落ちちゃった。」
「ばかやろうっ。」
ーーーあ、その表情も初めて見た。
遥はそんなことを思いながら立ち上がる。溝は遥の肩ぐらいの深さがあった。
「掴まれ。」
そう言って達也が手を伸ばそうとすると、男性が達也の肩をぐいっと掴み前にでる。
「兄貴には無理だ。お嬢さん、つかまってください。」
そう言ってニコッと笑い手を差し出す。
遥はその手を掴み溝から出ようとするが、なかなか上がれずにいたところを男性が遥の脇に手を入れスッと持ち上げる。
そしてストンと、地面におろす。
突然のことに遥は赤くなりながら、礼を言った。
「あはは、私、くさ~いっ」
そう言って屈託無く笑う遥を達也は一喝する。
「何やってんだ、お前怪我でもしたらどうするんだよ!」
遥は首をすくめたあと、笑いながらポケットに手を入れると、そこから溝で拾った物を達也に差し出した。
「だって、達也の大切なものなんでしょう?」
泥のついた手の上に乗っていたのは、ちぎられたチェーンと、そのチェーンを通した指輪だった。
大きな一粒のダイヤをたたえた、女性サイズの指輪だった。
それを見て達也が泣きそうな顔になる。
「だめだよ、大切なものをそんな簡単に捨てちゃ。」
「・・・子供が生意気いう…な…。」
語尾が小さくなり、それと共に達也の目が大きく見開かれる。
指輪の下の手のひらに赤いものが滲んでいた。
「水だっ。水をもってこいっ!!」
男性が水を用意すると達也は傷口にジャバジャバと水をかける。
「お前、車か?」
達也が男性に聞くと男性は車を待たせてあると言った。
「俺たちを中央病院に連れて行けっ。処置するっ。」
達也は遥の体を抱き上げると、男性の後に続いた。
「達也っ。汚れちゃうっ。こんな傷ほっといても大丈夫だからっ。」
達也の腕の中で遥が脚をバタつかせる。
「破傷風に感染したらどうするんだっ。頼むからおとなしくしていてくれ。」
そう言うと腕を少し持ち上げ直し、遥を自分の方に傾ける。
達也の腕の中で、遥は顔を赤くしながら、それでも大人しくしていたのだった。
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