お嬢様の淫事#08~トリヒキと約束~
「以上が佐伯涼介様に関する報告になります。」
高見沢はここ数日に渡る佐伯涼介に関する調査の報告を行った。
「ありがとう。さがっていいわ。」
高見沢は頭をさげ、部屋から出て行った。
ーーーさて。着地点を探そう。谷田部くんも、佐伯くんも多分お互いを誤解しているんだ。私も含め、三人が幸せになる方法を見つけるんだ。
麗香は密かに、しかし強く決心した。
それから数日後、麗香は研究室にいた。
谷田部の姿は見えず、佐伯だけが実験器具の準備をしていた。
「佐伯くん、私と取引しない?」
佐伯は麗香を一瞥した。
「私がここに来た目的はね、佐伯くんをうちの一族に迎える事なの。」
佐伯の手がとまり、麗香の方を向いて作業台に寄りかかった。
口にはシニカルな笑みが浮かんでいる。
「ふぅん。で?」
「佐伯くんも感じてると思うけど、私たち、まったく合わないのよ。SとSでは、惹かれ合わないのよね。惹かれ合う要素がまったくないのよ。」
佐伯は黙って麗香の次の言葉を待つ。
「佐伯くんが今何を研究しているのかは、何となく検討がついてる。それが完成するまで、ゴタゴタには巻き込まれたくないでしょ?」
佐伯の反応を確かめながら、麗香は話を慎重にすすめる。
これは麗香にとってもカケだった。
「私もね、時間が欲しいの。今ここに来ている事だけが、私に許されるただ一つだけの自由になる時間なの。」
「谷田部、か?」
佐伯は当然のようにその名前を口に出した。
ーーーのってきた。
「そう。私には谷田部くんと過ごすこの時間が必要なの。そこでね、取引なのよ。」
「綾小路グループの一人娘が俺のところにいる事によって俺の能力を探ろうとする人間への牽制となり、お前は俺を取り込む為に俺のそばにいるという大義名分が出来て谷田部と一緒にいれる、ということか。」
麗香は黙ってクビを縦に振った。
そして佐伯の言葉を待った。
佐伯はしばらく考えた後、下を向いて首を横に振った。
「この話はナシだ。そもそも前提が間違っている。それを谷田部が許すはずがない。」
自嘲ぎみ笑う佐伯に麗香は話を続ける。
「知ってたんだ。谷田部くんの事。」
「あぁ。まあ谷田部が俺の前に現れるまでしらなかったがな。あの後アメリカに強制的に留学させられて、知る機会がなかった。日本に帰って来てからの俺はただの道具だった。道具に考えるココロは必要無い。」
どれくらい時が流れただろうか。
時間にしてわずか数秒のことだったかもしれないが麗香には非常に長く感じられた。
喉の奥が干上がったかのようにカラカラする。しかしそんなことはおくびにも出さない。
「解毒剤、のようなものを作っているんでしょ?」
「・・・」
「時間が惜しいでしょう?」
「・・・」
「じゃあ、ダメ押しをするわよ。」
佐伯は一瞬身構える。
研究室のドアが開き、谷田部が部屋に入ってくる。
佐伯は意表をつかれ、ただ谷田部を見る。
「先生の研究を、俺に手伝わせてもらえませんか?」
「な…」
なんで、と、出かかった言葉を飲み込む程、佐伯は動揺していた。
先ほどシニカルな笑みを浮かべて麗香の話を聞いていた佐伯はどこにもいなかった。
「俺、薬学は得意なんです。役にたてると思いますよ。」
「・・・」
「正直言うとね、まだ気持ちの整理はついていないです。あんたの本意にしろそうでしないにしろ、姉さんが今おかれている状況にはかわりがない。
でもね、それだったら前を向け。最善の道を探せって、麗香さんに叱られました。」
「・・・」
「ひとつだけ付け加えるのであれば・・・その血はあんたのせいじゃない。それは、わかります。」
佐伯は二人に背中を向けた。
麗香には佐伯の肩が震えてように見えた。
ーーーこれで佐伯くんは許された。まだ救われたわけではないけれど、許されることはとても大事。佐伯くんは次につながる大きな一歩を踏み出した。次は谷田部くん。谷田部くんが救われる為には、解毒剤の完成が必須。その為には私はどんなことも辞さない。
谷田部が話を続ける。
「そのかわり、先生。完成したらあの日あんたと姉さんの間でなにがあったのか、あんたの口からおしえてくれ。
あんたがなぜ姉さんに刺されたのか、あんたの口から、あんたの言葉でききたい。」
佐伯は眼鏡を外しながら振り向き、谷田部の目をまっすぐに見た。
「約束する。」
佐伯ゼミが、ひとつにまとまった瞬間だった。
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高見沢はここ数日に渡る佐伯涼介に関する調査の報告を行った。
「ありがとう。さがっていいわ。」
高見沢は頭をさげ、部屋から出て行った。
ーーーさて。着地点を探そう。谷田部くんも、佐伯くんも多分お互いを誤解しているんだ。私も含め、三人が幸せになる方法を見つけるんだ。
麗香は密かに、しかし強く決心した。
それから数日後、麗香は研究室にいた。
谷田部の姿は見えず、佐伯だけが実験器具の準備をしていた。
「佐伯くん、私と取引しない?」
佐伯は麗香を一瞥した。
「私がここに来た目的はね、佐伯くんをうちの一族に迎える事なの。」
佐伯の手がとまり、麗香の方を向いて作業台に寄りかかった。
口にはシニカルな笑みが浮かんでいる。
「ふぅん。で?」
「佐伯くんも感じてると思うけど、私たち、まったく合わないのよ。SとSでは、惹かれ合わないのよね。惹かれ合う要素がまったくないのよ。」
佐伯は黙って麗香の次の言葉を待つ。
「佐伯くんが今何を研究しているのかは、何となく検討がついてる。それが完成するまで、ゴタゴタには巻き込まれたくないでしょ?」
佐伯の反応を確かめながら、麗香は話を慎重にすすめる。
これは麗香にとってもカケだった。
「私もね、時間が欲しいの。今ここに来ている事だけが、私に許されるただ一つだけの自由になる時間なの。」
「谷田部、か?」
佐伯は当然のようにその名前を口に出した。
ーーーのってきた。
「そう。私には谷田部くんと過ごすこの時間が必要なの。そこでね、取引なのよ。」
「綾小路グループの一人娘が俺のところにいる事によって俺の能力を探ろうとする人間への牽制となり、お前は俺を取り込む為に俺のそばにいるという大義名分が出来て谷田部と一緒にいれる、ということか。」
麗香は黙ってクビを縦に振った。
そして佐伯の言葉を待った。
佐伯はしばらく考えた後、下を向いて首を横に振った。
「この話はナシだ。そもそも前提が間違っている。それを谷田部が許すはずがない。」
自嘲ぎみ笑う佐伯に麗香は話を続ける。
「知ってたんだ。谷田部くんの事。」
「あぁ。まあ谷田部が俺の前に現れるまでしらなかったがな。あの後アメリカに強制的に留学させられて、知る機会がなかった。日本に帰って来てからの俺はただの道具だった。道具に考えるココロは必要無い。」
どれくらい時が流れただろうか。
時間にしてわずか数秒のことだったかもしれないが麗香には非常に長く感じられた。
喉の奥が干上がったかのようにカラカラする。しかしそんなことはおくびにも出さない。
「解毒剤、のようなものを作っているんでしょ?」
「・・・」
「時間が惜しいでしょう?」
「・・・」
「じゃあ、ダメ押しをするわよ。」
佐伯は一瞬身構える。
研究室のドアが開き、谷田部が部屋に入ってくる。
佐伯は意表をつかれ、ただ谷田部を見る。
「先生の研究を、俺に手伝わせてもらえませんか?」
「な…」
なんで、と、出かかった言葉を飲み込む程、佐伯は動揺していた。
先ほどシニカルな笑みを浮かべて麗香の話を聞いていた佐伯はどこにもいなかった。
「俺、薬学は得意なんです。役にたてると思いますよ。」
「・・・」
「正直言うとね、まだ気持ちの整理はついていないです。あんたの本意にしろそうでしないにしろ、姉さんが今おかれている状況にはかわりがない。
でもね、それだったら前を向け。最善の道を探せって、麗香さんに叱られました。」
「・・・」
「ひとつだけ付け加えるのであれば・・・その血はあんたのせいじゃない。それは、わかります。」
佐伯は二人に背中を向けた。
麗香には佐伯の肩が震えてように見えた。
ーーーこれで佐伯くんは許された。まだ救われたわけではないけれど、許されることはとても大事。佐伯くんは次につながる大きな一歩を踏み出した。次は谷田部くん。谷田部くんが救われる為には、解毒剤の完成が必須。その為には私はどんなことも辞さない。
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