淫猥病棟#08~狂気~
透き通るような白い肌。絹のような滑らかな肌にメスを落とす。
途端に鮮やかな赤い液体が、玉のように湧き出す。
コワシタイ。コノママ、オレダケノモノニシタイ。
祐介はガバッと起き上がった。
額からは冷たい汗が吹き出て、頬を伝う。
息は荒く、瞬きを忘れる程、目は見開いている。
「俺は…」
額に手をあて、うつむく。
いやな夢を洗い流すように、祐介はシャワーを浴びていた。
均整の取れた、しなやかなカラダにシャワーの水が幾重にも線を作る。
前髪をかきあげると、キュッとシャワーのコックを閉めた。
春奈用の鍵をテーブルの上に置き、春奈を残したまま部屋を出る。
愛車、と言うにはだいぶ無頓着に使っている車を駆り、病院へと向かう。
誰にも見咎められず、弥生の個室に入った祐介は、弥生の傍にある椅子に腰掛けた。
しばらく弥生の顔を見ていると、ドアを叩く音がする。
「どうぞ」
そう言って祐介が席を立つと、涼介がドアから入ってきた。
涼介はすこし驚いて祐介に声をかけた。
「あ、兄貴。」
「よお、元気か。りじちょー」
自分の心を悟られまいとしてか、努めて明るく言葉を返した。
それにつられて涼介は少し笑顔になる。
「りじちょーはやめてくれよ。ただの事務的な肩書きだ。それより、弥生の具合、どう?」
祐介は弥生をチラッと見ると、クチを開いた。
「薬が効いてるみたいで、よく寝てるよ。ちょっとハードな手術だったからね。寝ていられるときは寝かせてやってくれ。」
「わかった。」
「それにしても、前兆はあっただろうに。責めるつもりはないが、お前、もう少し弥生ちゃんの事、気にかけてやれよ。あと数時間遅かったら、手遅れになっているところだったんだぞ。」
祐介は、『俺なら』という言葉を呑み込んだ。
「反省してるよ。ちょうど理事長就任関連でバタバタしていた時期だったからな。ほんと、反省してる。」
「お前が素直だと、ほんと、気持ち悪い。」
陳腐な捨て台詞を残して、祐介は部屋を出た。
今は涼介と弥生を同時に視界にいれたくなかった。
---わかってる。この感情は。ただの嫉妬だ。
「こら。祐介先生っ。私服で病棟をウロウロしないでください?」
振り向くとそこには看護師長の福田がいた。口調とは裏腹に、顔は全然起こっていない。
「あ、すみません。着替えてきます。」
福田はニコッと笑って、祐介を見送った。
その日の夜、祐介は弥生の病室にいた。最近はここで休憩をとることが日課になっていた。
「ん…」
弥生がうめき声をあげ、祐介はハッと顔をあげ、弥生を見守る。
やがてうっすらと弥生の目があく。
「祐介さん?」
---あぁ、この子はちゃんと俺のことを見てくれる。
「痛い?」
「ん…。少し。ついてくださってたんですか?ありがとうございます…」
弥生は力なく笑った。
祐介は胸が締め付けられたようになる。
「弥生ちゃん。痛みってのはカラダからのシグナルなんだから、ガマンしちゃダメだよ。」
「ごめんなさい…」
---違うよ弥生ちゃん。謝って欲しいわけじゃないんだ。ただ、君が大切なだけなんだ。
「うん。わかればよろしい。」
祐介はワザとおどけて言う。
弥生はふふふ、と笑おうとしたが、腹が引きつれて痛く、笑えなかった。
一方、目を覚ました春奈は、しばらくボーッとしていたが、やっと自分が今おかれている状況を把握した。
「ヤるだけヤったら、何も言わず病院に行っちゃったんだ…」
軽くムッとしながら、立ち上がり、水を飲もうとキッチンへ向かう。
その途中、テーブルの上にある鍵が目に入った。鍵の下にはオートロックの暗証番号と、祐介のものと思われる携帯番号・メールアドレスが書いてあった。
「カラダだけの契約、か。」
春奈はその紙をキュッと握りしめた。
---それにしても…祐介先生って、どんだけバック好き?あ、そうじゃなかったときもあったっけ?でも、駅弁状態でしがみついてる私の背中を鏡でうつしていたっけ。・・・背中フェチ?まさかね。
春奈は少し笑いながら身支度を整えると部屋を後にした。
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