淫猥病棟#58~お子様ランチ~
祐介は福田を追いかけ、呼び止めた。
「福田師長っ。」
福田は微笑みながらゆっくりと振り向く。
「福田師長。単刀直入に聞きます。あなたはシロチョーの仲間ですか?」
少し間があいたあと、福田がゆっくりと口を開く。
「仲間ですよ?この病院の。祐介先生、あなただって、仲間じゃないですか?」
「誤魔化さないでください。俺が聞きたいのはそういうことじゃない。わかってますよね?」
「祐介先生のおっしゃっていることはわかりかねますが、ただひとつ。私はシロチョーを信じていますよ。」
「福田・・師長・・・」
福田がにこっと笑う。
「もういいですか?祐介先生も、早くお帰りになった方がいいですよ?レセプト出していないでしょう?事務の子が探してましたよ。見つかると帰れなくなりますよ。」
そういってクスクスっと笑う。
そんな福田を相手に、祐介は真面目な顔で話した。
「わかった。俺も、信じるところから始める。何か俺のチカラが必要になった時は、遠慮なく言ってください。」
そこで一呼吸おき、顔をあげて廊下の曲がり角の方に向かって言う。
「シロチョーにも伝えてください。黒羽の為にも早めに相談してくれって。」
福田は笑顔で会釈をして、祐介に背中を向けて歩き出した。
祐介も福田に背中を向けて、歩き出した。
福田が廊下の角までいくと、その角を曲がったところに、壁に寄りかかるように田代がいた。
「よォ。」
「よォじゃないですよ。あんな若い子に心配されちゃって。」
「ははは。確かにな。俺ももう年だな。隠居するか。」
田代は笑いながら上を向き、遠い目をする。
福田は困ったといった笑顔をつくる。
「何を言ってるんですか。まだ、早いですよ。」
福田の言葉に、田代の目の焦点が合う。上を向いていた顔が元の位置に戻る。
「だな。まだ、やらなきゃいけないことは山積みだ。」
お互いの視線が一瞬だけ交差し、2人は違う方向へと歩き出した。
祐介が黒羽の家につくと、健太が飛び出してきた。
「健太、か?でかくなったなぁ。」
祐介は驚く。
「おじちゃん、僕のこと知ってるの?」
「おじ・・・」
「ねえ、ねえ。おじちゃんの車、見せてよっ。」
「お兄さんの車、見せてやるなぁ~。」
引きっった笑みを浮かべながら祐介はドアを開けてやる。
健太が嬉しそうに乗り込む。
すると、祐介の視界に入らないところから声がした。
「おじさん、だれ?」
祐介はキョロキョロし、やがて、それが自分の足元からする声だとわかった。足元に愛がいた。
祐介はしゃがみ込む。
「お兄さんはねぇ、お兄ちゃんのお友達。って、何?その疑いの眼差しはっ」
祐介たちの声を聞きつけて、春奈が玄関に出てきた。
「春奈ぁっ。この子に俺は怪しくないって説明してよっ。」
「おねえちゃんの名前、呼び捨てなの?」
愛の気色ばんだ声に、祐介が驚く。
「え?う、うん。」
---敵だ。このヒトは透おにぃちゃんの敵だっ。
小学生一年だというのに恐るべきオンナの感で、愛は祐介を敵だと認識した。
「あ、愛ちゃん、なんでお兄さんのこと、睨んでるのかなぁ?」
祐介が引きつりながら愛に触ろうとする。
愛はそれをヒラっと避けると、そばに来た 春奈の後ろに隠れる。
「愛ちゃん~。このお兄さんはいい人よ?」
春奈は笑いながらフォローするが、春奈の影から愛がまだ祐介を睨みつけている。
「おねぇちゃん、お家入ろうっ。」
そういって春奈の手を引っ張って行った。
春奈は中腰で手を引かれながら、祐介に向かってゴメン、とジェスチャーした。
「怖え。大人女子並みに、怖え。」
そうつぶやくと、車の中の健太に声をかける。
「健太、家ん中、入るぞー。」
健太は運転席に座り、ハンドルを握って楽しそうにしている。
「えー。もうちょっとー」
「今度走ってる車に乗せてやるよ。だから今日はもう入るぞ。」
健太の目が輝く。
「ほんと?お兄ちゃん、約束だよっ」
そういって家の中にかけていった。
---お兄ちゃんに格上げされたか。よかったよかった。それにしても、おじさん、か。俺ってもうそんな年?!
軽く落ち込みながら、祐介も黒羽の家に入って行った。
そして、食卓に並ぶ皿をみて、呆気に取られた。
「クロ・・・。これは?」
コップにオレンジジュースを注ぎながら黒羽が答える。
「見てわかんないのか?お子様ランチだ。」
「あ、いや、それはわかるんだけど、気のせいか5人分並んでいるように見えるんだけど・・・」
「ん?あってるんじゃないか?ちょうど5人だろ?」
祐介はもう一度食卓の上を確認する。
チキンピラフのオムライスにハンバーグ。その下にはナポリタンスパゲッティが敷いてある。クリームコロッケにエビフライ。から揚げまである。星型にくり抜かれたパプリカがかわいいサラダ。コーンクリームスープにプリン。
何度確認しても、お子様ランチだった。ご丁寧にオムライスの上には旗が立っている。
「えーと、なんでお子様ランチ?」
黒羽はニヤッと笑う。
「お前の好きなものを集めたら、こうなった。お子様な奴め。」
「えっ。ええっ。いつこんな話を?!」
「病院の廊下で好きなものの話をしたじゃねぇか。ほら、葛西が不可侵協定とか変な事言い出す前。」
「あっ。」
祐介は思い出した。そういえばふざけていくつもいくつも好きなものをあげていった気がする。ただ黒羽をからかって困らせたかっただけなのに、まさか具象化するとは、祐介は思ってもみなかった。
「主婦、恐るべし。」
「誰が主婦だ。誰が。」
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