妄想彼氏#31～凹んだり舞い上がったり～

遥はその日、東京駅のホームにいた。

日帰りの為、さほど大きくはない鞄を両手で持っている。

———早く着きすぎちゃった・・・。

連休初日だけあって、新幹線のホームは荷物を抱えた親子連れで賑わっていた。

———いいなぁ。お泊り。私もお泊まりしたいなぁ・・・

「随分はやいじゃん。」

振り返るといつもよりラフな格好をした祐介が立っていた。

「祐介のそういう格好・・・初めて見た。かっこいい・・・」

遥はぽ～っとなりながら祐介を見る。

———どうしよう。みんな見てる。そうだ。祐介と初めてあった時も、みんな祐介の事見てた。隣にいて恥ずかしいよ～っっ

祐介はにこやかに微笑みながら、遥のバッグを持つと、もう片方の手で、遥の肩を抱き寄せた。

「遥もいつもと少し雰囲気が違うね。もしかして俺に合わせて大人っぽい格好をきてきてくれた？」

背中に祐介の腕の温もりを感じ、遥は赤くなりながらコクリと頷く。そんな遥に祐介は小さく「サンキュ」と言う。

「もしかしてっておもってホームをのぞいてよかった。これからさ手土産を買うんだけど何がいいかわからないからさ。一緒に選んでくれない？」

そう言って祐介は遥の手を取ると、階段に向かって歩き出した。
祐介に手を握られ、遥は赤くなりながら、別のことを考えていた。

———似合わなかったのかな、服。

祐介が褒めてくれなかったことに、若干の不満と不安を感じながら、祐介に引っ張られるように歩く。

無理して履いてきたヒールの高い靴が、踵がこすれてヒリヒリと痛む。

一旦改札を出て、駅に隣接する商業施設に入ると、祐介はなぜかエスカレーターに遥を乗せた。

「祐介？お土産物は一階だよ？」

不思議がる遥の後ろに立ち遥に微笑む祐介。エスカレーターに乗っている分、いつもより視線が近い。

祐介に連れて行かれたのは、靴屋だった。

「遥。無理して背伸びしなくてもいいんじゃないか？そんな高いヒールの靴じゃなくて、もっと遥らしい靴を選びなよ。」

そう言って祐介は店員に声をかけると近くの椅子に座って遥を見ていた。

一方、遥は落ち込んでいた。

服装を褒めてもらえないばかりか、まるでダメだしをされたかのような自分に、がっかりしていた。

「似合ってるじゃん。」

新しい靴を履いている遥に祐介が声をかける。遥にはそれが自分の子供っぽさを指摘されているようで、さらに落ち込む。

「なんかさ。機嫌悪い？」

黙ってしまった遥に、祐介が声をかける。

遥は黙って首を横に振る。

そしてふと気がつく。

「祐介、お土産は？」

祐介がデパートを出て改札にそのまま向かっていることに気がつき、遥は祐介に尋ねた。

「ん？もう時間があまりないからね。ホームに行くよ？」

当然のように祐介が言うと、遥は驚き、そしてすまなそうに謝る。

「ごめん。祐介…。」

祐介は優しい目をして遥のアタマをポンポンと叩く。

「あたりまえだろ？こっちの方が大事。」

そう言って遥の手を握り、ホームへと上がるエスカレーターに遥を先に乗せ、そのすぐ後ろについた。

そして、遥を抱きしめるように背中から手を回す。

突然のことに、遥は赤くなる。

「俺さ、今日はたくさん甘えさせてもらうから。」

祐介に耳元でそう囁かれ、遥は赤い顔がさらに赤くなるのだった。

---

こんにちはー。まぬかんです～


アップが遅くなってごめんなさい～。

バタバタとごめんなさい。

なんか、あやまってばかりでごめんなさい～っっ

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