淫猥病棟#74～写真に写るキミの笑顔～

　
　
春奈と黒羽は居間でコーヒーを飲みながらお土産のお菓子を食べていた。

「それでですね、祐介先生がいきなりモデルをやる事になったんです。」

春奈は祐介がパンフレットのモデルになった話をしていた。

「へえー。まあ、あいつ黙っていればそれなりに見えるかもしれないからな。」

春奈はクスクスと笑い、カバンから封筒をとりだした。叶から渡されたあの茶封筒だった。

「私もまだ見てないんですけど、一緒に見ましょうか♪」

そういって写真の束をとりだした。

そこには取り澄ました顔の祐介が写っていた。

「なんか、照れるな。」

「透さんもですか？私もです。」

－－－祐介先生、かっこいい…。

そんな春奈の横顔を黒羽は見ている。

その時奥の方で春奈を呼ぶ愛の声が聞こえた。

黒羽が立ち上がるのを春奈は止めて、自分が行くと言って部屋を出て行った。

目の前のテーブルには、春奈が置いた写真の束がある。

それは少し崩れていて、下の方にある写真も少し見えていた。

－－－？

黒羽は不意にその一枚を取り出して見た。




そして息を飲んだ。


春奈のウエディングドレス姿がそこにはあった。

波打ち際で、祐介と額をつけながら、幸せそうに笑っていた。



黒羽はハッとなり、写真の山をくずす。

そこには２人の写真が多数あった。

２人で海に向かっているバックショットなどは、結婚したての２人が手を取り合いお互いの未来に向けて愛を語らっているそれ以外、何にも見えなかった。


－－－葛西っ







春奈が居間に戻ると、黒羽がコーヒーを入れ直していた。

「あれ？透さん、写真見るのやめちゃったんですか？」

そんな写真が入っている事を知らない春奈は、無邪気に笑いながら聞く。

「なんか気恥ずかしくなってな。あとは寮に帰ってから一人で見ろよ。」

春奈は笑って黒羽の隣に立った。

「いい香り。」

そういって黒羽を見上げて笑う。

不意に向けられた春奈の笑顔に、黒羽は胸が締め付けられた。

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