淫猥病棟#91~共に、未来を。~
その数分後、春奈は病院の屋上にいた。
ベンチに座り、空を眺めている。
下を向いたら涙がこぼれてしまいそうで、空を見ているふりをしている。
ギシッ
春奈の横でベンチの軋む音がした。
春奈の手に、冷たい缶コーヒーを握らせる。
春奈が横を向くと、先程の春奈と同じように空を眺めている祐介がいた。
「俺も、おヒマを出されちゃったよ。」
力なく笑う祐介に、春奈も力なくふふっと笑う。
「祐介先生は、金山さんが西さんのお父さんだって、ご存知だったんですか?」
祐介は自分の分の缶コーヒーを開けると、ひとくちくちに含んだ。
「俺が執刀する予定だったからね。術式の説明の時に知った。」
「…」
「あと、一日待っていてくれたらな…。」
そう言って、再び空をみあげ、遠い目をする。
「患者の死に立ち会ったの、初めてなんだって?」
春奈はコクリと小さく頷いた。
「そっか。」
祐介は春奈の頭に手をおくと、ぐいっと自分の胸に引き寄せた。
祐介のぬくもりを感じ、溢れるものを抑えることができず、春奈はただ泣いた。
しばらくして、春奈が落ち着いたのを確認すると、祐介が話し始めた。
「金山さんさ、春奈の事がすごく気に入ったみたいで、西さんの嫁に欲しいって言ってたんだ。俺の前でさ。」
祐介は春奈を自分の胸から離し、指で涙を拭うと、真剣で、でも、どこかはにかんだような複雑な表情で口を開いた。
「春奈、結婚しよう?」
突然の祐介のプロポーズに、春奈は状況が飲み込めずにいた。
「ずっと、一緒にいよう?老いても、ずっと一緒にいよう。」
春奈は驚きのあまり声も出ない。
「一緒に歳を重ねていきたいんだ。こんな事思ったの初めてなんだ。」
祐介が春奈の頬に触れる。
「春奈の未来を、春奈のすべてを、俺にくれないか?」
祐介は真剣な表情で春奈を見つめている。
「ゆ…すけせん…せ…。」
「考えてみて。返事は急がない。」
そう言って軽くキスをした。
「俺、夜勤明けで明日オフだから。今晩食事でも行こう。」
そう言って春奈の返事も聞かず歩き出した。
---もう、強引なんだから。
祐介の後姿を見送る。
---私が一人になったら落ち込むと思ったのかな?それにしても・・・
先程の祐介の顔が目に焼き付いて離れない。
---祐介先生・・・。
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