淫猥病棟#90~急変~
翌日出勤した春奈は、病棟内の廊下で、夜勤明けの祐介にバッタリあった。
「なんか久しぶり。」
「ですね。今日はもうお帰りですか?」
祐介がうーんと唸る。
「夕べ急変した患者さんが気になるから、今日は病院に泊まろうかなって思ってる。」
「そうなんですか?お疲れ様です。」
---祐介先生には昨日のシロチョーの事、話しておいた方がいいかな?
そう思って口を開こうとした瞬間、遠くから祐介を呼ぶ看護師の声が聞こえた。
「祐介先生っ。金山さんがっ。心停止ですっ!!」
「すぐ行くっ」
「えっ?金山さん?」
祐介はもう走り始めていて春奈の声は届かなかった。
漠然とした不安が春奈を包む。
春奈がICUを覗くと、沢山のチューブやコードが体の至る所から出ている金山の姿が目に入った。
将棋をうって豪快に笑っていた金山の面影はどこにもなかった。
青ざめる春奈の横を、第一外科の師長である福田が通り過ぎる。
「師長っ。金山さん…」
青ざめる春奈に、福田は落ち着きなさいと言わんばかりに腕を掴んだ。
「昨晩急変されてね。手術を明日に控えていらしたんだけど…。ちょっと難しいわね…。」
「手術をしないと…どうなるんですか?師長っ。金山さんっ。」
「葛西さん?」
春奈がみるみる青ざめていく様を福田は厳しい目で見ていた。
「葛西さん。ちょっとこっちにきなさい。」
ICU内のガラス張りの個室に連れていかれる。
今は患者はいない。
福田はそっと扉を閉めると、少しだけキツイ口調で詰問した。
「葛西さん。看護師であるあなたが、患者さんの前で不安な顔をしてどうするの?」
「師長…。」
「どんな時でも、私達は助かる事を信じるの。私達が信じないで、誰が信じるの?」
春奈はふらっとガラスの壁に向かい、金山の姿を見る。
祐介が汗を流しながら、必死で心臓マッサージを続けている。
「金山さんっ。戻って来いっ。」
祐介のクチはそう動いているように見えた。
春奈はふらつきながら、扉を開け、個室を一歩出る。
「祐介。もういい。手を止めろ。」
同じ第一外科の先輩医師が祐介にストップをかける。
しかし祐介は手を止めない。
「祐介っ。もうやめろっ。静かに送ってさしあげろ。」
先程よりも強い口調で、その医師は祐介に命令する。
祐介は心臓マッサージをするための台から降りると、唇をギュッと噛み締め、形式的にアイサインを確認した後、時計を見た。
「◯月◯日△時△分。死亡を、確認しました。」
ICUの隅から、男性がふらりと金山に歩み寄る。
写真家の西だった。
祐介は西に気づくとその前に立ち、頭を深く下げる。
「力及ばす、申し訳ありません。」
西はポンと祐介の肩に手をかけた。
「そんなことない。ありがと。祐介クン。」
そう言って西は金山の傍に立った。
春奈の背後に、福田が立つ。
「葛西さん。時間年休をとっていいから、気持ちを立て直してきなさい。」
春奈は福田に頭を下げると、ICUを後にした。
- 関連記事
←お礼ページ始めました♪
FC2ブログランキングに参加しています よかったら「つん」ってしてね♪ |
にほんブログ村ランキング(愛欲小説)にも参加 しています。押してもらえると小躍りします♪♪ |
人気ブログランキング(官能小説)に復帰でき ました♪押してもらえると跳ねて喜びます♪♪ |
官能小説.comのランキングに参加してみました♪ よかったらこちらもクリックしてみてください♪♪ |
官能文書わーるどのランキングに参加してみました♪ よかったらこちらもクリックしてみてください♪♪ |
いつも応援してくださってありがとうございます!!みんな優しくって大好きですっ
ささやかなお願い:
当ブログには「inポイントを稼ぐための騙しリンク」や「PVを稼ぐための意味の無い大量の空白行」はありません。
皆さんの愛(クリックや閲覧)だけで成り立っています。もし「しょうがねぇな、少しは応援してやるか」という気持ちになられましたら、バンバンクリックしていただけると泣いて喜びます。
当ブログには「inポイントを稼ぐための騙しリンク」や「PVを稼ぐための意味の無い大量の空白行」はありません。
皆さんの愛(クリックや閲覧)だけで成り立っています。もし「しょうがねぇな、少しは応援してやるか」という気持ちになられましたら、バンバンクリックしていただけると泣いて喜びます。