淫猥病棟#104~ムジカク~
話終わった後、ゆう子は何かを考えているようで黙ったままでいる。
「ゆう子さん?」
春奈の声にも気がつかない。
春奈はもう一度呼ぶ。
「ゆう子さん」
ゆう子がハッとなり、笑いながらごめんと謝った。
ゆう子の表情には何処か含んだようなところがあって、春奈は首をかしげた。
しかしゆう子が言わないということは聞いても答えてもらえないと思い、特に触れないでいた。
「春奈ちゃん。」
ゆう子がまっすぐ春奈に向き合い、体の前で春奈の両手を握る。
「がんばろ、私達!」
なにを頑張るのかは明言しなかったが、ゆう子の決意を込めた目に、春奈は力強く頷いた。
その夜、春奈はゆう子のマンションに泊まった。
ゆう子は遅くまで調べ物をしていたようで、翌朝起きてきたゆう子は、まぶたが半分ぐらいしかあいていなかった。
車で病院まで送ると言ったゆう子の申し出を丁寧に断って、春奈は病院へと向かった。
病院に着くと、通用口の周りに人だかりができていた。
---また綿貫代議士への取材かな?
そう思いながら、人だかりの横を通り抜けて行く。
「あっ。来たっ。黒羽先生だっ。」
---え?
春奈は驚いて後ろを振り返ると、ちょうど黒羽が通用口へと歩いてきているところだった。
記者が黒羽を一気に取り囲む。
---え?なに?なんで透さんが囲まれてるの?
春奈は目を丸くしてその光景を見ていた。
すると通用口から事務局長が飛び出してきて人だかりの中に切り込む。
やがてその中から事務局長の声が聞こえる。
「後日院内にて会見を行いますので、個別の取材はご遠慮くださいっ。」
そこを一言、という声がほうぼうから上がる。
やがて黒羽を護るようにして事務長が人だかりの中を掻き分けながら出てきた。そして通用口に向かって歩いてくる。
黒羽は通用口の前で呆気にとられている春奈に気がついた。
黒羽はすれ違いざま、軽く目を細めて微笑むと、事務局長とともに病院内に入っていった。
---何が起こったの?
春奈が不思議がりながら更衣室に入ると、今朝のマスコミについて先輩看護師が話していた。
「黒王子、すごいね。」
その輪に春奈も加わる。
「おはようございます。どうしたんですか?」
「あぁ、春奈知らないの?黒王子の論文が、世界的権威のある学術誌に取り上げられたって。」
春奈は驚いた。
病院ではオーバーワークとも言える仕事をこなし、家では弟たちの面倒を見て、一体いつ論文を書く時間があったのだろうか。
「その学術誌に取り上げられた人は、その後かなりの確率でノーベル医学生理学賞を取るっていう噂よ?!」
皆が驚いた。
「それって、もう医師としての未来は保証されたも同然てことよね。すごいなぁ。でも、やっぱり海外に行っちゃうのかな?」
なにげなく出たひとことに春奈は驚く。
「なんでですか?」
その先輩はあなたなにも知らないのね、といったような困った顔をしながら話した。
「研究をすすめるんだったら海外の方がバックアップ体制も整っているし。」
「研究医としてすすんでいくんだったら、海外の方が体制面も金銭面でもいいってよく言われてるのよ。」
海外に出るのがあたりまえだと言わんばかりの先輩達の声に、春奈は居心地の悪さを感じていた。
その居心地の悪さが、どこからくる感情なのか。春奈は無自覚だった。
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「ゆう子さん?」
春奈の声にも気がつかない。
春奈はもう一度呼ぶ。
「ゆう子さん」
ゆう子がハッとなり、笑いながらごめんと謝った。
ゆう子の表情には何処か含んだようなところがあって、春奈は首をかしげた。
しかしゆう子が言わないということは聞いても答えてもらえないと思い、特に触れないでいた。
「春奈ちゃん。」
ゆう子がまっすぐ春奈に向き合い、体の前で春奈の両手を握る。
「がんばろ、私達!」
なにを頑張るのかは明言しなかったが、ゆう子の決意を込めた目に、春奈は力強く頷いた。
その夜、春奈はゆう子のマンションに泊まった。
ゆう子は遅くまで調べ物をしていたようで、翌朝起きてきたゆう子は、まぶたが半分ぐらいしかあいていなかった。
車で病院まで送ると言ったゆう子の申し出を丁寧に断って、春奈は病院へと向かった。
病院に着くと、通用口の周りに人だかりができていた。
---また綿貫代議士への取材かな?
そう思いながら、人だかりの横を通り抜けて行く。
「あっ。来たっ。黒羽先生だっ。」
---え?
春奈は驚いて後ろを振り返ると、ちょうど黒羽が通用口へと歩いてきているところだった。
記者が黒羽を一気に取り囲む。
---え?なに?なんで透さんが囲まれてるの?
春奈は目を丸くしてその光景を見ていた。
すると通用口から事務局長が飛び出してきて人だかりの中に切り込む。
やがてその中から事務局長の声が聞こえる。
「後日院内にて会見を行いますので、個別の取材はご遠慮くださいっ。」
そこを一言、という声がほうぼうから上がる。
やがて黒羽を護るようにして事務長が人だかりの中を掻き分けながら出てきた。そして通用口に向かって歩いてくる。
黒羽は通用口の前で呆気にとられている春奈に気がついた。
黒羽はすれ違いざま、軽く目を細めて微笑むと、事務局長とともに病院内に入っていった。
---何が起こったの?
春奈が不思議がりながら更衣室に入ると、今朝のマスコミについて先輩看護師が話していた。
「黒王子、すごいね。」
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「おはようございます。どうしたんですか?」
「あぁ、春奈知らないの?黒王子の論文が、世界的権威のある学術誌に取り上げられたって。」
春奈は驚いた。
病院ではオーバーワークとも言える仕事をこなし、家では弟たちの面倒を見て、一体いつ論文を書く時間があったのだろうか。
「その学術誌に取り上げられた人は、その後かなりの確率でノーベル医学生理学賞を取るっていう噂よ?!」
皆が驚いた。
「それって、もう医師としての未来は保証されたも同然てことよね。すごいなぁ。でも、やっぱり海外に行っちゃうのかな?」
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「なんでですか?」
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「研究をすすめるんだったら海外の方がバックアップ体制も整っているし。」
「研究医としてすすんでいくんだったら、海外の方が体制面も金銭面でもいいってよく言われてるのよ。」
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