淫猥病棟#106~ドキドキのランチ~
「・・るなっ。春奈っ。」
春奈は自分を呼ぶ声に我に返った。
「え・・・?」
あたりを見回す。
そこは見慣れた病院内の食堂だった。
春奈は先輩看護師と共に食堂に居た。
「春奈?聞いてるの?」
「えー、と…」
先輩はやっぱり聞いてなかったわね?と、口を尖らせて言ったあと、ニコッと笑って春奈に言った。
「春奈も見に行くでしょ?今日の黒王子の記者会見。」
学術誌に載った日から今日で約一週間。病院がマスコミ向けに記者会見を開くことになった。
「そうですね。」
春奈は歯切れの悪い返事をした。
しかし先輩はそれに気がつかず、他の看護師と話をしている。
ーーー透さん…。やっぱり海外に行っちゃうんだ…。祐介先生はいつかは佐伯会を継ぐはずだし、忘れていたけど、2人ともすごい人だったんだ…。その2人から私は・・・
『俺と・・・佐伯祐介と結婚してください。』
『葛西春奈さん、俺と結婚してください。』
2人の告白が、頭の中で交互に繰り返される。
その時、先輩の一人が、大きい声でトレイを持って歩いている人物に声をかける。
「祐介先生~っ。ここ空いてますよー。」
春奈は驚いて顔を上げると、祐介と目が合った。
祐介は戸惑ったような顔で微笑むと、その先輩が勧めた席、春奈の左隣の席に座った。
「先生、すごい食べるんですねー。」
「ん?ああ、今日は午後からオペが2つ入っているから、これぐらい食べておかないと持たなくって。逆に、それしか食べないの?それで午後持つの?」
話をふられた先輩看護師は嬉しそうにダイエット中なんで、と、答えた。
「ダイエットしなくても、十分ステキなのに。」
祐介が微笑みながら先輩看護師に言うと、春奈を除いた全員が、きゃーっとさわぐ。
ーーー祐介先生の、女ったらし。
春奈は心の中で悪態をついた。
その時、椅子の座面についていた手に、さわっと何かが触れる。
ーーー?
最初は何が触れたかわからなかった春奈も、やがてそれが祐介の手であることがわかった。
ーーーちょっ。祐介先生、こんなところでっ。
先輩たちは、あの、不可侵協定を声高に叫んでいる人達だ。
その人たちの前で、祐介がテーブルの下で指を絡めてくる。
春奈はドキドキしながらも、祐介の手の温もりに、ホッと安心する。
ーーーよかった。祐介先生が普通に接してくれて。
「いてっ」
突然祐介が声をあげて、春奈から手を離した。
驚いて振り返ると、黒羽が祐介を睨むというよりかは少し侮蔑したような目で見下ろし、春奈の手を握っていた方の腕をつねっていた。
「クロっ。なにすんだよっ。」
黒羽はそんな祐介を気にもとめず、春奈をはさんで祐介の反対側の席へ行くと、他の看護師に向かって昼食を一緒にとっていいかと聞いた。
もちろん、誰一人として反対するものはいなかった。
「黒羽先生、会見今日ですね。」
看護師が黒羽に聞くと、ふっと笑って黒羽が答える。
「ああ。でも俺は座っているだけでいいって言われてるから。」
祐介がすかさずツッコミをいれる。
「なんかリップサービスの一つでもかましてやれよ。」
「俺はお前みたいに口から先に生まれてないんだよっ」
その時、春奈の両脚・・・太ももの脇に、何かが触れる気配がした。
ーーーちょっ。ちょっと?!
祐介が左から、黒羽が右から、それぞれ春奈に触れてくる。
ーーーあなたたち、そっくりですから。シロチョーの言ってたことは本当だっ。もう、ふたりとも、やってること一緒ですからっ。
その日の昼食は、いったいどこに入っていったのか、まったくわからない春奈だった。
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