妄想彼氏#10~余計なこと言わないで~
「痛っ。」
達也が小さく発した言葉に遥はハッとして腕を離す。
「ゴメンっ。」
達也は笑いながら腕をさすると申し訳なさそうに口を開いた。
「こっちこそごめん。ちょっとオオゲサだった。」
そんな達也を見て、遥は済まなそうにうなだれる。
「達也さ。」
「うん?」
「その怪我、どうしたの?なんでリハビリさぼってるの?」
「あ、覚えてたんだ。その話。」
遥はなんとなく茶化された気になり、憮然とした。
そんな気配を察したのか、達也が腕をさすりながら話す。
「昔、ね。いろいろあって、ね。」
ーーーそれ、全然説明になっていないんだけど・・・。
そんなことを思いながら、黙って達也の横を歩いていた。
「あ。」
達也の足がピタリと止まる。
つられて遥の足も止まる。
ーーー達也のそっくりさん!
街中でばったりと出会った男性は、先日遥が街中で見かけた達也にそっくりな人物だった。
その人物は遥にニコッと笑いかけた後、達也に話しかける。
「兄貴。援交?」
達也は珍しくムッとした表情になる。
ーーーあ、初めて見た表情。
遥は達也の顔を見上げ、そんなことを思っていた。
「何言ってんだよ。これからメシ食いに行くだけだよ。」
男性は再びチラッと遥を見ると、ふぅとため息をついて達也に向き直った。
「これから食事だったら、帰るのは遅い時間になるだろ?その時間に制服はどうかと思うけど。やっとマスコミが落ち着いたんだろ?わざわざネタを提供することはないと思うが?」
達也はうーんと唸ると、小声でそれもそうか、とつぶやいた。
ーーーマスコミ?よくわかんないけどこの人余計なこと言わないでよっ。せっかく達也といられるのに!
そんなことを考えていると、達也が内ポケットから財布を取り出し、遥に何枚か紙幣を握らせる。
「遥。そこの喫茶店で待ってるから、なにか服を買っておいで。すこし大人っぽいやつがいいな。」
「兄貴っ」
「遥。行っておいで。」
遥は戸惑いながらも、達也の勢いに押されてその場を離れる。まるで遥に会話を聞かせたくないと言わんばかりの達也の態度に、遥は気になって少し離れたところで立ち止まっている。背中で達也の声が聞こえる。
「彼女とはなんでもない。彼女が本当の彼氏と出会うまでの間、話をしているだけだ。」
「兄貴っ。兄貴は自暴自棄になってるんじゃないのか?リハビリもしてないんだろ?」
「自暴自棄になんてなってないよ。」
「だったらなんでリハビリをしない?忘れられないんだろ?彼女のことが。まだ結婚してないって聞いてるぞ。そんなに未練があるんだったら、迎えに行って来いよ!」
「黙れっ。」
「知ってるぞ。兄貴が首から下げてるチェーンの先に、なにがついているのかっ」
しばらく沈黙が流れ、達也が低い声で喋り出す。
「それ以上言うと、いくらお前でも許さないぞ。」
「俺が言わなかったら、誰が兄貴に言うんだ?!」
二人は激昂し、睨み合っている。遥はそれを固唾を飲んで見守っている。
達也はワイシャツの襟を乱暴に開く。ブチブチっと鈍い糸のちぎれる音がした。そしてその中のチェーンを掴むと、力任せに引き千切った。
そして男性の顔を睨み、側溝に投げ捨てた。
カツンと音がした後ちゃぽんと水音がする。
その瞬間、遥は飛び出していた。
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達也が小さく発した言葉に遥はハッとして腕を離す。
「ゴメンっ。」
達也は笑いながら腕をさすると申し訳なさそうに口を開いた。
「こっちこそごめん。ちょっとオオゲサだった。」
そんな達也を見て、遥は済まなそうにうなだれる。
「達也さ。」
「うん?」
「その怪我、どうしたの?なんでリハビリさぼってるの?」
「あ、覚えてたんだ。その話。」
遥はなんとなく茶化された気になり、憮然とした。
そんな気配を察したのか、達也が腕をさすりながら話す。
「昔、ね。いろいろあって、ね。」
ーーーそれ、全然説明になっていないんだけど・・・。
そんなことを思いながら、黙って達也の横を歩いていた。
「あ。」
達也の足がピタリと止まる。
つられて遥の足も止まる。
ーーー達也のそっくりさん!
街中でばったりと出会った男性は、先日遥が街中で見かけた達也にそっくりな人物だった。
その人物は遥にニコッと笑いかけた後、達也に話しかける。
「兄貴。援交?」
達也は珍しくムッとした表情になる。
ーーーあ、初めて見た表情。
遥は達也の顔を見上げ、そんなことを思っていた。
「何言ってんだよ。これからメシ食いに行くだけだよ。」
男性は再びチラッと遥を見ると、ふぅとため息をついて達也に向き直った。
「これから食事だったら、帰るのは遅い時間になるだろ?その時間に制服はどうかと思うけど。やっとマスコミが落ち着いたんだろ?わざわざネタを提供することはないと思うが?」
達也はうーんと唸ると、小声でそれもそうか、とつぶやいた。
ーーーマスコミ?よくわかんないけどこの人余計なこと言わないでよっ。せっかく達也といられるのに!
そんなことを考えていると、達也が内ポケットから財布を取り出し、遥に何枚か紙幣を握らせる。
「遥。そこの喫茶店で待ってるから、なにか服を買っておいで。すこし大人っぽいやつがいいな。」
「兄貴っ」
「遥。行っておいで。」
遥は戸惑いながらも、達也の勢いに押されてその場を離れる。まるで遥に会話を聞かせたくないと言わんばかりの達也の態度に、遥は気になって少し離れたところで立ち止まっている。背中で達也の声が聞こえる。
「彼女とはなんでもない。彼女が本当の彼氏と出会うまでの間、話をしているだけだ。」
「兄貴っ。兄貴は自暴自棄になってるんじゃないのか?リハビリもしてないんだろ?」
「自暴自棄になんてなってないよ。」
「だったらなんでリハビリをしない?忘れられないんだろ?彼女のことが。まだ結婚してないって聞いてるぞ。そんなに未練があるんだったら、迎えに行って来いよ!」
「黙れっ。」
「知ってるぞ。兄貴が首から下げてるチェーンの先に、なにがついているのかっ」
しばらく沈黙が流れ、達也が低い声で喋り出す。
「それ以上言うと、いくらお前でも許さないぞ。」
「俺が言わなかったら、誰が兄貴に言うんだ?!」
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