妄想彼氏#40～アイシテル～

　
　
「疲れた。」

祐介は術衣からスーツ姿に着替え、応接室のソファーにどっかりと座る。

その横に、遥が座る。

「すごいね。祐介。この手で人の命を救っちゃうんだ・・・」

そういって祐介の左手をとる。

「遥にケツを叩かれてリハビリを開始していなかったらって思ってゾッとしたよ。それでも途中で握力がなくなってさ。焦った。」

ははっと笑う祐介の表情を遥は眩しそうに見ている。

「俺さ、がんばった。」

「うん。祐介がんばったね。」

祐介がなぜそんなことをいきなり言い出したのかよくわからないまま、遥は笑みを浮かべながらそのまま返した。

「だからさ、がんばった俺にご褒美をくれよ。」

そういって、トントンと自分の唇を人差し指で叩く。

遥は頬をピンク色に染めながら、腰を浮かし、ゆっくりと祐介の唇に顔を近づける。


今までの触れるだけのキスとは違う。

そして自分から押し付けただけのキスとも違う。

遥は祐介の唇の柔らかさを感じ、何度もキスを繰り返す。

やがてゆっくりと唇を重ね、角度を変え貪るようにお互いの唇を交差させる。

「ん・・・」

祐介の舌が遥の唇を割って射し込まれ、遥はそれに自身の舌を絡める。

－－－祐介との、オトナのキス・・・。好きな人とのキスがこんなにも蕩けてしまうものだなんて・・・・。

ゆっくりと唇を離し、お互いの目を見つめる。

「遥・・・。早く大人になれ。」

「祐介？」

「今、高校2年だったっけ。あと1年か。俺、がまんできるかなぁ。」

そういって祐介がふふっと笑う。

「・・・がまんしなくても、いいのに。」

遥がくちを尖らせながら言うと、祐介はさらに笑い、遥のあたまを優しく撫でる。

「まだまだ先は長いんだから。でも、ま、がまんできなくなったら、その時考えるか。」

そういって再び遥にキスをした。


－－－祐介が幸せそうに笑ってくれる。だから私も幸せ。祐介、いっしょに幸せになろう？私がいっぱい、いっぱい祐介のこと愛してあげる。

「祐介・・・・。あ・・・愛してる。」

初めて”愛している”という単語を口にした気恥ずかしさから、下を向く遥に、祐介は耳元に唇を寄せそっと囁く。

「がまんできなくなっちゃった。」


真っ赤になって顔を上げると、目の前に口角をあげ自分をニヤニヤと見ている祐介がいた。

「だっ。だましたわねーっ。もうっ。ひどいっっ。」

そう言って祐介をポンポンと叩く。

祐介はそれを笑って受け流す。

－－－当の昔から、がまんできなくなってるよ。

「遥。愛してる。」

「祐介っ。」

ソファーの上に膝をつき、遥は祐介に抱きついた。

－－－遥。愛してる。”愛してる”って、ステキな言葉だってこと、忘れてた。このひとことで心が温かくなる。そして相手から贈られる”愛している”は、心を熱くする。遥、ありがとう。俺にこの温もりを思い出させてくれて。俺にもう一度この言葉を口にさせてくれて。自分の歳の半分にも満たない君に、愛を説かれるとは思わなかった。生意気で世の中をなにもわかっていないような君に安らぎを与えてもらうとは思わなかった。

祐介は抱きついてきた遥の背中に手を回し、ギュゥっと抱きしめる。

お互いの温もりを感じ、しばらくそうして抱き合っていた。

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