俺様王子とヒミツの契約#61~効力~
まりあ編
「まりあチャン。心臓を一突きして死んじゃってって、命令して。」
私を拘束している男———桃太郎の兄だとかいう男が、耳元でそう呟いた。
———いやっ。そんなこと言えない。
私は口が開かないように顎に力を入れるのだけれど、そんな抵抗は虚しくおわった。
私の口が、ゆっくりと開く。
———いやっ。桃太郎が死んじゃうなんて、いやっ。
私は目の端に涙を浮かべながら桃太郎を見た。
桃太郎はまっすぐ私を見ている。
その表情は凛として、何故だか気品に溢れているように感じた。
頭には生クリームとかついているのに、桃太郎がいままでで1番格好良く見えた。
桃太郎の口の端に笑みが浮かぶ。
私に気にするなと言っているのだろうか。お前は悪くないと言っているのだろうか?
いやだ。いやなの。
「…桃太郎……。」
なんで私の口、止まらないのっ。
やめてっ。こんなのひどすぎるっ。
「心臓を突いて…死になさい……。」
桃太郎の手が勢いをつけるために大きく掲げられる。
そして、一気に胸へと振り下ろす———
「やった!イイコだから解放してあげるよ、まりあチャン。」
男がそう言って私の手を離した。
「桃太郎っ。桃太郎っっ。」
戒めを解かれ声も出せるようになった私は、胸を突き突っ伏すようにうずくまっている桃太郎のところへ駆け寄る。
「桃太郎っ。いやっ。返事をしてっ。お願いっ。私の全部をあげるからっ。桃太郎と一緒に魔界でもどこでもついていくからっ。だからお願いっ。目を開けてっ。桃太郎っ。」
私は桃太郎に抱きつくようにして泣きじゃくった。
桃太郎を失ってから自分の気持ちに気がつくなんて。
もっと早く気がついて、抱きしめてもらえばよかった。
もっと早く気がついて、たくさんキスの雨を降らしてもらえばよかった。
なんで、今になって気がつくの?
私、なんて馬鹿なんだろう。
嗚咽混じりで、私は桃太郎を抱きしめながら囁くように伝える。
「桃太郎…。好きなの…。愛してるの…。…あなたと共に生きたいの…。」
「その言葉、忘れるな。」
桃太郎がいきなり体を起こし、私を引き寄せるように片手で抱きしめる。
もう片方の手からは玉状に丸まった稲妻のようなものがでて、兄だとかいう男目掛けて放たれた。
男はそれを手のひらで受け止めると、シュゥ~という音とともに一筋煙が立った。
「なんだよ。なんで死んでないんだよ。その女の命令になんで従わない?!」
私と桃太郎を一緒に睨みながら、男が低い声で言った。
それとは逆に、桃太郎は私を抱きかかえたまま、不敵な笑みを浮かべる。
「あいにくだったな。今日は朔の月だ。」
男の顔色が変わる。
どういうこと?
私が不思議そうな顔で桃太郎を見上げると、桃太郎は私の唇を指ですっと撫でた。
「隷属の儀は、月の光の下(もと)でのみ効力を発揮する。昼間であれ夜であれ
、月の力が届かない朔の月では、隷属の儀は無効だ。残念だったな。」
私は桃太郎に抱きかかえられたまま、桃太郎のシャツの胸元をキュッと握る。
朔の月———新月の日は、私の命令は無効ってこと?じゃあケーキとか被ったのは、演技だったってこと?
「出ていってもらおうか。」
桃太郎からものすごく威圧感のあるオーラのようなものが出ていて、桃太郎兄はそれに飲まれているようだった。
桃太郎兄は「桃太郎を王位に推す者がいる」と言っていたけど、なんだかわかる気がする。
桃太郎兄はふうっとため息をもらすと、笑顔になった。
「せっかく面白かったのに、なんかいきなり興が覚めた。…まりあチャン。」
いきなり名前を呼ばれ、ドキッとして桃太郎兄を見る。
「また来るね~。その時は、イイコトしようね☆彡」
そう言って手をヒラヒラさせると、シュッという音と共に姿が消えた。
気が抜けた私は、その場にヘナヘナと座り込んだ。
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