【妄想彼氏番外編】ヨコシマな願いは叶わない #05

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遥　編

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「おいしい！」

祐介がちょっと大袈裟じゃないの？って思うほど私が作った料理を誉めてくれる。

でも、気持ちいいぐらいの食べっぷりで。次第に私も楽しい気分になっていく。

「俺さ、こういう家庭料理ってほとんど食べたことなくってさ。母親いなかったから通いの人が料理作ってくれるんだけど、肉じゃがとかもなんかよそ行きの味なんだよ。だから家庭料理ってちょっと憧れみたいなのがあってさ。」

「今までつき合ってきた人は？作ってくれなかったの？」

「んー。なんか気持ち悪くて食べれなかった。」

「気持ち悪いとか、ひどっ。」

「その頃は誰にも心を許してなかったからね。人の作ったもんなんて何が入ってるかわからなかったし。」

「……じゃあ、春奈さんは？春奈さんのご飯は食べたの？」

うつむいてそう尋ねると、祐介の困った気配が伝わってきた。

「なんでそこで春奈が出てくるかわからないけど、彼女の手料理も食べたことないよ。」

ほんとに？また、うそついてない？

「ちなみに、クロのはあるよ。」

「……え？」

思わず顔をあげると、祐介が私を見てにやにやと笑っていた。

「クロの料理だったら何回か食べたことある。あいつああ見えて料理うまいんだ。」

あまりの意外な話に、ぽかんとしてしまった。

「遥、マヌケな顔になってるよ。」

「……え？えっ？！」

私は真っ赤になって頬を手で覆う。

「あいつ、家事全般そつなくこなすんだよ。ずっとひとりで弟たち育ててきたからね。」

そう言えば病院側の屋上でやった結婚式に、クロさんの両親はいなかった。車椅子に乗った、えーと、えーと、ホルモンみたいな名前の人がまるでクロさんのお父さんみたいに泣いて笑ってた。

あー、名前思い出せない。

「遥、眉間にシワがよってるよ。」

私はあわてて眉間を指でこする。

その様子がよっぽどおかしかったのか、祐介が声をあげて笑い出した。

「俺はさ、今日こうして遥が家で待っていてくれて、こうやって俺のために料理を作ってくれて。それがうれしいの。それをさ、元カノは作ってくれなかったのか、とか、なんで聞くんだよ。」

「……ごめん。」

「あやまって欲しいわけじゃないよ。」

祐介が立ち上がり、いすに座っている私の背後にまわる。

そしてそっと後ろから私を抱きしめた。

「過去なんて関係ない。今、ここでこうして一緒にいるのは遥なんだから。」

「う……ん。」

祐介の腕を抱えるように手を添えて、その腕に顔を擦るように頷いた。




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