淫猥病棟#14~わからないココロ~
翌朝、子供達の賑やかな足音で春奈は目が覚めた。
「あっ。お姉ちゃん、おはようっ。いってきまーす。」
そういうと健太と愛はランドセルを背負ってバタバタと走って行った。
ひょいと男性が顔をのぞかせる。
「起きたか?少し腹に入れろ。で、薬を飲んで寝ろ。職場にも休むって電話入れとけ。」
そういうと春奈の目の前にトレイを差し出す。トレイには温かいお粥と薬と水がのせてあった。
「じゃあ、俺も出るから。ここにいていいから、しっかり寝てろ。今日一日は絶対安静にしてろ。」
そういうと男性は出て行ってしまった。
---ここは、どこだろう?
ちょっと古いつくりの、和風の一軒家。
居間と思われる畳の部屋に布団が敷かれ、春奈はそこで寝ていたようだった。
3丁目の夕日とかにでてきそう・・・・と、そんなことを思いながら、お粥をすくい、クチに運んだ。
「あ・・・美味しい・・・」
涙がホロっとでた。
お粥の優しい味が、ココロに染みてくるようだった。
病院では、ナースステーションの前を通った祐介が、春奈の休みを知ったところだった。
少し考え込んだ後、屋上に行って携帯を取り出す。
春奈に電話をかけるが繋がらず、呼び出し音だけが何度も続いた。
その時、不意に後ろから声をかけられ、振り向く。
「祐介。ちょっといいか?」
「お前から声をかけてくるなんて、珍しいな。」
そこには祐介と同期の黒羽透(くろば とおる)が立っていた。
「お前さ、葛西に何をした?」
黒羽は眼光鋭く祐介に迫った。
「?。あれ?黒ちゃんって葛西さんのこと知ってんの?なんで?」
「黒ちゃんって言うな。昨日、雨の中倒れているのを拾った。熱にうなされているとき、お前の名前を何度も呼んでいた。」
祐介の真意を読み取ろうと、黒羽は祐介の顔をじっと見る。
「そんなに俺の顔を見つめるなよ。俺って男も惚れちゃうぐらい、いい男?」
「茶化すな。彼女は明らかに乱暴された形跡があったぞ。コートの中の服もボロボロだった。」
「・・・合意の上だよ。」
「なんだよ、それ。そんなんであんなになるのかよっ。ほんとうだな?やましいところは何ひとつないんだな?」
祐介は黒羽に背中を向けると、屋上のところどころに出ている通気口の上に乗り大きく伸びをする。
「なんにもねぇよ。そもそも関係ないし。」
祐介が背中を向けているため、表情がみえず真意がよみとれない。
そんな祐介に少しイラっとしながら、黒羽は話を続ける。
「ふーん。わかった。じゃあ、俺が彼女をどうしようと、お前には関係ないな?」
頭の上で手を組んだまま、祐介が振り向き見下ろす。その顔は無表情だった。
「どういう、意味?」
黒羽は祐介を睨んだまま立っている。
「なに、黒ちゃんって、葛西さんのこと好きだったの?」
黒羽はまだ口を開かない。
「ふーん。浮いた噂がひとつもなかった黒ちゃんがねえ。てっきり女には興味がないのかと思ってたよ。」
---あれ?祐介先生の、声?
春奈は着信に気づき、通話ボタンをおしたところだった。
電話の向こうで、かすかに祐介と誰かがしゃべっている声がする。
「どうなんだ。いいんだな?」
---誰?
「別に構わないよ。俺と葛西さんはなんでもない。別にどうでもいい。」
---!
春奈は反射的に電話を切った。
涙が溢れてきてとまらない。
「わかった。じゃあ、俺が葛西に何をしようと、お前は別に構わないんだな。」
祐介は再び黒羽に背中を向けた。
「べつに。だから関係ないって、言ってるじゃん。」
「わかった。じゃあ、好きにする。早退するから、お前、第二外科も見とけ。」
「はぁ?わけわかんないっ」
黒羽はすでに背中を向け階段室へと歩いて行った。
「ほんと、わかんない・・・」
そうつぶやくと、祐介はいつまでも空を見上げていた。
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