淫猥病棟#20~罪悪感~
前日の忙しさが嘘のように、その日は平穏な一日だった。
---えーと、次の仕事は、立花さんのリハビリ、と。
コンコン
「失礼しまーす。立花さんー。歩行く・・・」
春奈が元気良く病室に入ると、弥生が唇には人差し指を立て、静かに、というような仕草をした。
弥生がもう片方の手で指した先には、ベッドの横の椅子に座り、倒れこむように寝ている祐介の姿があった。
「歩行訓練ですか?」
弥生は小声で春奈に聞いた。
「はい。起き上がれますか?」
「はい。いたたた」
弥生は点滴のポールを杖代わりにして、なんとか立ち上がった。
額にはすでに脂汗が浮いている。
「リハビリ室までは車椅子にしましょう。」
そういうとベッドの横にある車椅子を開いて弥生を座らせた。
「虫垂炎の後の歩行訓練って、実はとっても大切なんですよ。」
春奈が順を追って説明する。
「というわけで、無理しない範囲で、どんどん歩きましょう」
「はーい。」
---弥生さんって、いい人だ。明るいし綺麗だし、控えめなところとか、男の人はみんな好きなんだろうなぁ…。それに、巨乳だし。
先程弥生がつまづいた時、触れてしまった胸の感触を思い出し、手をグーパーグーパーしていた。
---私はオヤジか・・・
そこへ廊下をバタバタと走ってくる音が聞こえた。
リハビリ室のドアが開かれる。
そこには血相を変えた祐介が立っていた。
「あ・・・」
皆に注目され、祐介はハッとなる。
「失礼しました。皆さん続けてください。」
祐介は取り澄ました顔をして、リハビリ室に入ってきた。
「弥生ちゃん、ごめん。歩行訓練付き合うって言ったのに、俺、寝ちゃって。」
顔の前で手を合わせながら祐介が謝る。
それを弥生は笑いながら返す。
「いいのに。祐介さん。昨日救急の後に緊急オペ入ったんであんまり寝ていないんでしょう?もっと寝ていれば良かったのに。私には葛西さんもいるし。」
祐介は春奈を、ちらっと見る。春奈は一瞬どきっとする。
祐介は弥生に向き直り、頭を下げた。
「ごめん。どうして歩行訓練が必要なのか、という話は、主治医の俺から話すべきなんだ。最初は特に体調面とかも見たいし。ほんと、ごめん。葛西さんも起こしてよ。」
春奈はなんとなくムッとしながら話を聞いていた。
弥生がすかさずフォローに入る。
「違いますっ。私が起こさないでってお願いしたんですっ。葛西さんは悪くありませんっ。」
---なんだろう。このイライラする気持ちは。
春奈はしばらく2人のやり取りを静観していた。しかし、2人のやり取りを見て、だんだん、なんとなく腹が立ってきた。
「弥生ちゃん、ついに俺への愛に目覚めた?」
茶化し始めた祐介に対し、ピシャリと言い放つ。
「いい加減にしてください。彼女はリハビリにきているんです。祐介先生とおしゃべりにきているんじゃないんです。ジャマしないでください。」
「す、すみません。」
祐介は思わず謝って、窓際へと移動した。
窓枠に寄りかかり、軽く手と足を組んで、2人の背中を見ていた。
---双子みてぇ。
そう思ってから、罪悪感が襲ってきた。
以前自分が弥生に対して吐露した想い。
『みんなあいつばかり見る。俺を通してあいつを見ているんだ。』
---俺を通して涼介を見られるのがあんなに嫌だったのに、俺は同じ事を春奈ちゃんにしてるのか?俺は・・・
その日、祐介はメールで春奈をマンションへ誘った。
春奈から返事は来ず、マンションへも姿を現さなかった。
「気づいた時には、もう遅い、か。」
祐介は返事のこないスマホを壁に投げつけ、ソファに身を預けた。
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