淫猥病棟#39~道化師~
「じいちゃん、知ってたんだ。俺のこと。」
「はい。虎二郎様の双子の兄であられる虎一郎様も祐介様と同じだったと伺っております。人心を掌握する帝王の血。その能力が色濃く出るのは決まって双子の弟だったそうです。兄はその血を宿すのみで、能力者とわからないまま一生を終える者もいたそうです。血を直接使うという危険なことをしなければ、それとわかることはありません。」
祐介は視線を動かすのも辛いといったように、ゆっくりと高瀬を見る。
「虎二郎様の兄、寅一郎様はその血を今の祐介様のように直接使われ、そのチカラに翻弄され非業の死を遂げられました。祐一郎様には能力は遺伝せずに安心されていましたが、祐一郎様の奥様が双子をご懐妊されたことがわかり、虎二郎様は塞ぎこまれました。」
祐介は黙って話の続きを聞く。
「お兄様の死が片時も頭から離れたことのなかった虎二郎様は、どうやったらあなた方2人を守れるか、そればかりお考えでした。」
高瀬は一呼吸おく。
「ですから虎二郎様はあなた様にはその血は流れていない、と、皆の前で公言なさいました。跡継ぎに涼介様を推したのも、この血の宿命に、せめてあなた様だけは巻き込みたくないと思われたからです。」
「え・・・?」
「あなた様は虎二郎様に疎まれていると思われているようですが、虎二郎様は疎まれてなどいらっしゃいませんでした。むしろ、あなた様の幸せだけを願っていらっしゃったのです。」
「そんな・・・。じいちゃんが死んだ後に言われても…。俺、じいちゃんに何も言えない…。」
「だからあなた様はバカだというのです。こんなにも大きな愛で包まれているのに、すっかり卑屈になられて…。」
「あぁ、確かにバカヤロー…だな…。」
うつむいた祐介の目元が光る。
高瀬は、ふぅ、と、ひと息ついた後立ち上がり美也子に何かを注射した。
「?。なに・・・?それ・・・」
「解毒剤、です。涼介様からまさかの時のために預かっておりました。」
「涼介が?!というか、解毒剤?あるのか・・・?そんなものが・・・?」
クラっとフラついた祐介を高瀬は支えた。
「非常にご苦労をされて、ここまでの精度のものが出来たと伺っております。」
高瀬の手をほどきながら、祐介がつぶやく。
「涼介が・・・」
「ひとかたならぬご尽力をいただいたのが弥生様との事です。」
「はは。そうだったんだ。俺、なんにも知らないで。あの2人にそんな強い絆があるなんて知らずに。とんだ道化だ。」
背中を向け、肩を震わしている祐介に高瀬はそっと手を触れる。
「人は、人を愛せば誰でも道化になるものでございます。それが人に恋い焦がれる、心を奪われるというものでございます。」
高瀬の指が、祐介の肩から襟首にすすっと動き、首筋をくすぐるように指をくねらす。
祐介は驚き首筋に手を当て高瀬に振り向く。
「なっ」
「女性との愛に疲れましたら、いつでもお声をかけてください。」
高瀬は妖しく微笑んだ。
「お、俺は女の子が好きなんでっ。」
高瀬はふふっと笑いながら冗談です、と言った。
---うそだ。うそだっ。目がマジだったっっ。
「さて。特別病棟の件ですが。」
祐介は二度と高瀬に背後を取られないよう警戒しながら話を聞く。
「祐介様はどのように切り崩して行くおつもりだったのですか?実態はどこまで把握さていらっしゃるのですか?」
祐介は顔を赤くしてプイッと横を向く。
「まさか…。ノープランですか?」
「悪いか?」
高瀬は深いため息をついた。
「特別病棟に入る方法は二つございます。一つは正規ルートである扉から。もう一つは、地下駐車場にあるタワー式の駐車場からです。」
「そんなところに。」
「はい。その具体的な方法ですが・・・と、今はお話できません。」
「なぜだ。」
「言ったらあなた様はお一人で乗り込まれることでしょう?私も一緒に参ります故、お話することはありません。ただし、あなた様のされたことの後始末をしてから向かいます。」
「高瀬。」
祐介は立ち上がり、高瀬をまっすぐに見た。
高瀬はその表情から目が離せないでいた。
「話せ。特別病棟への入り方を。」
高瀬は何も言えずにただ祐介の顔を見ている。高瀬の背中にはゾクリとした疼きにも似た感覚が走る。
「高瀬。」
祐介の鋭い眼光に、高瀬は参った、といった表情で首を左右に振る。
「あぁ、本当にあなた方双子は、虎二郎様と同じ目を持っていらして、わたしの心を揺さぶってくる。わかりました。お話します。しかし、決して無茶はなさいませんように。」
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