淫猥病棟#64～バイト料～

　
　
「じゃあ祐介さんの着替えとメイクおねがいしまーすっ。」

メイク係の女性に連れられて、祐介はマイクロバスの中へと消えて行った。

しばらく春奈がモデルの女性と話していると、白い燕尾服を着た祐介が現れた。

祐介が照れながら春奈の前に立つ。

「なんかさ、こういうの着るの、七五三以来なんだけど。すげぇ恥ずかしい…。服に着られてる。？。春奈？聞いてる？」

しばらく祐介に見惚れていた春奈がハッと我に返る。

「祐介先生、本当に白王子…。」

「はあ？なんだそれ。」

「かっこいいです。とっても。ものすごく。」

祐介の顔が赤くなる。

「ま、褒められて悪い気はしないけど…。」

程なくして撮影が始まった。

「彼氏くん、かっこいいね。さっき先生とか王子とか言っていたけど、何をしているひとなの？あ、私メイクの恵。よろしくね。」

大きな傘の下で撮影を見ている春奈の横にメイク担当の恵がやってきて話しかけた。

「こちらこそ。春奈です。あの人はお医者さんなんです。ナースの間では白王子って呼ばれてるんですよ。」

「そうなんだ！高学歴で高収入その上イケメンって最高だね。」

－－－祐介先生のいいところはそれだけじゃないもん。むしろそんなのおまけだもん。

春奈は内心むくれる。

「春奈ちゃん。ただまっているだけじゃヒマでしょ？メイクしてあげるよ。」

「え？いいですっ。」

－－－祐介先生みていたいし。

「まあそう言わずにさっ。春奈ちゃん肌がキレイだからメイクのしがいがありそうっ。」

恵に半ば強制的にメイクをさせられた。

メイクが終わる頃には撮影もちょうど終わっていた。

－－－恵さんのせいであんまり見れなかったっ。もうっ。しかもこのメイクとヘアスタイル、甘すぎて、今日の洋服に全然あってないっ。この人センス悪いんじゃないの？！

そんな悪態をついていると、モデルの女性がいつの間にか目の前に来ていた。

「じゃ、彼女さん。行きますか。」

モデルの女性と恵はニヤッと示し合わせたかのように笑うと、春奈の両腕をとってマイクロバスへ向かって歩き出した。

「なに？なにっっ？」






しばらくして、砂浜に立っている祐介のところに、春奈がやってきた。

「祐介先生…。」

春奈は少し照れた声で祐介をよぶ。

祐介はゆっくりと後ろを振り向く。

そして目を細める。

「きれいだ。春奈。」

そこにはウエディングドレスを着た春奈が立っていた。

春奈は前髪を直すフリをして、うつむき赤い顔を隠す。

「祐介先生が頼んでくれたって、恵さんに聞きました。」

祐介は春奈の顎に指をかけるとくいっと持ち上げ、春奈を見つめる。

「すごい着たそうな顔をしていたし…」

春奈も祐介をまっすぐ見つめる。

「絶対似合うと思ったし…」

優しい風が2人の頬を撫でる。


「何よりも俺が、見てみたかったし…」

そう言うとそっと春奈にキスをした。

唇が離れ、2人とも照れ臭そうにふふっと笑う。

「私、先生の撮影、あんまり見れなかったんです…。かっこいい先生見たかった。」

照れて少し下にうつむきながら春奈は言った。

「今、みればいいじゃん。」

そういって祐介は春奈を抱きしめる。

「こんなにくっついていたら、見えないです…」

祐介はなにもいわず、さらに春奈をギュッと抱きしめる。

少しそのままでいた後、そっと耳元でささやく。

「本当は、春奈にはあまり見せないでくれって、俺が頼んだんだ。」

「え？」

春奈は上体を少しそらし、祐介を見る。

「いくら撮影だって言っても、他のオンナとイチャイチャしてるところ、見て欲しくなかったんだ。」

「祐介先生・・・。」

祐介は少しかがみ、春奈と額を合わせながら笑う。

その様子を少し離れた所で西が見ていた。

「ほう。」

火のついていないタバコを口にくわえながら、そっとカメラを構えた。

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