淫猥病棟#96~愛しい背中~
春奈が化粧を直しに席を外すと、祐介はジョルジュを呼んだ。
「失礼いたします。お呼びでしょうか?」
ジョルジュがドアを開けて入ってくると、祐介に向かって礼をした。
「チェックを」
するとジョルジュは心得ていたのか、伝票をすっと祐介に差し出した。
伝票のカバーを開け書いてある金額を見た祐介は驚き、ジョルジュに向かって口を開いた。
「ジョルジュ」
名前を呼んだ所で、ジョルジュがストップというジェスチャーをする。
「ジョルジュ・・・。」
「ユースケ。私はうれしいんですよ。あんなにおチビさんだったユースケが、あんな素敵なお嬢さんを連れてきて。私との約束を覚えていてくれたんですよね?私は何よりもそれがうれしい。なので、材料費だけください。」
「ジョルジュ・・・。いや、でも、これは少なすぎだ。ワイン代も入っていないだろ。俺の生まれた年のワインだったよね?」
「おー。気がついていましたか?お嬢さんしか目に入っていないかと思いました!」
「・・・否定はしないけどさ。俺の生まれた年って当たり年で、今はプレミアついているはずだ。とてもこんな値段じゃ飲めないはずだ。」
「今は、でしょう?」
「え?」
「ユースケが産まれる直前に、あなたのお母様が。あなたたち兄弟の人生の節目節目で出して欲しいと、10本ほど購入されて、当レストランのカーブに眠っていました。」
祐介は驚いた。
「母さん・・・が?」
ジョルジュはにっこりと微笑む。
「エチケットは、みましたか?ユースケ。」
「いや?」
そう言ってワインボトルを手に取ると、祐介は目を見開いた。祐介の瞳が揺れる。
「これ・・・」
「どうぞ、瓶ごとお持ち帰りください。当店ではそれは処分できません。それではひとまずお預かりして、お持ち帰りいただく準備をしてまいります。」
ジョルジュが瓶を受け取りお辞儀をして顔を上げた時には、祐介はすでに背中を向け、窓際に立っていた。
ジョルジュはその背中に向け微笑むと、再び一礼して部屋を出て行った。
部屋を出ると、ちょうど春奈が部屋に向かって歩いてきているところだった。
「お嬢さん。」
「はい。」
春奈はニコッと微笑んで小首をかしげた。
「何も言わず、ユースケを抱きしめてあげてください。」
そう言ってウインクすると、その場を去って行った。
---?なんだろう?
不思議に思いながら部屋に入ると、祐介が背中を向け、窓際に立っていた。
「?」
よく見ると、肩が細かく震えている。
「祐介先生?」
春奈が声をかけると、祐介の肩がピクッと動いた。
「ごめ・・・。ちょっとだけ1人に・・・してくれ・・・。こんな姿・・・見られたく・・・ない・・・。」
---先生、泣いてる?
「春奈・・・。お願いだから・・・。見てほしくないんだ・・・。こんな、情けない俺の姿・・・。」
春奈は自然と一歩を踏み出した。
「!」
祐介が驚く。
春奈が背中にピッタリとつき、手を祐介の胸に回している。
「はる・・・な・・・」
「こうすれば、見えません。」
春奈はそれだけ言って、抱きしめる腕にチカラを込めた。
「・・は・・るなっ」
祐介が反転し、春奈を強く抱きしめた。
春奈は驚いたが、すぐに祐介の背中に手を回した。
「春奈っ。春奈っっ。」
春奈の背中が反るほど、祐介は己をぶつけるように春奈を抱きしめる。
春奈もそんな祐介に応えるように、強く抱きしめ返す。
---祐介先生・・・。私はどんなあなたでも、好きです。情けなくっても、かっこよくっても、ひどい事をいっても、それは、あなただから、あなたなんだから、私は好きなんです。
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