淫猥病棟#31~青空とハンカチとクロくん~
数日後、病室にいる私を担当の看護師が車椅子に乗せ、屋上へと連れて行った。
「ねー。ハルちゃん。いい天気でしょー?人間はお日様の光を浴びなきゃだめよー」
明るく笑う看護師はナツさんといって、わたしのことをハルとよんでいた。あと、アキとフユがいたら完璧だねー、と、明るく笑っていた。
私はそんな話をずっと上の空で聞いていた。
その時、屋上にいた老人が胸を抑えてうずくまった。
ナツさんは私を見て複雑な顔をした後、信じてるからね、と言って老人の元へ走り、付き添って行った。
屋上にひとり取り残された私は、空を仰ぎ見た。
きれい。
雲ひとつない、青空。
きれいすぎて、恐い。。。
「泣かないで・・・ハルちゃん」
気がつくと私は涙を流していた。
そんな私にハンカチを差し出す男子がいた。
高校生ぐらいだろうか。
ブレザー姿のその人は、私にハンカチを無理やり持たせると、私のすぐ横にあるベンチに腰をおろした。
「確かに、泣きたくなるようなきれいな青空だな…」
寂しそうに笑うその人の横顔をみていた。私を助けてくれたあの男性に似ていた。
そう思うと、新しい涙が溢れてきた。
そんな私に気がつくと、その人は少し困った顔をして私の顔を覗き込む。
「泣くな…、泣かないで…。ハルちゃん…。」
そういうと私の頬を流れている涙を親指で拭った。
「俺さ…。クロっていうんだ。君の心の傷が癒えたら、親父の最期の様子を…教えてくれないか?」
そういうとクロくんは立ち上がり、やっぱり寂しそうに笑うと私から離れていった。
クロくんはあの男性の子供だった。
彼が寂しそうな顔をしていたのは私のせい。
私の、せい。
数日後、私は退院したが、言葉は戻らなかった。
私は生きているようで生きていなかった。
自分のせいで、ひとりの人生を奪い、そしてその人の子供の人生を狂わせてしまった。
犯人はまだ捕まっていないらしい。
でも、ある意味私も加害者だ。
私が殺したも同じだ。
そして何年もの月日が流れた。
あの日中学一年だった私は、そのまま学校へいくこともなく中学を卒業した。
何をするわけでもない。
もうこんな自分を消してしまえたら、そんなことばかり考えていた。
そんなある日。
台所でガタンと大きな音がした後、何枚もの皿が割れる音がした。
その時、いやな胸騒ぎがして、台所に駆けつけた。
母が倒れていた。
声が出せない私は、母の元にしゃがむと、肩を揺さぶる。
母に男性の姿が重なる。
いやだ。
もう人が死ぬのはいやだ。
腰が抜けた状態でカウンターの上にある電話を床に落とすと、119番に電話する。
「はいっ。救急です。」
「・・・・」
「もしもしっ。どうされましたかっ?もしもしっ。」
「・・・て。た・・す・・けてっ。」
私は泣き出していた。
「お母さんをっ。助けてっ」
ココロから声を絞り出した。
数分後、サイレンの音が近づいてくるまで、母に寄り添い泣いていた。
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