淫猥病棟#52~ただいま~
クラクラする頭を押さえ立ち上がろうとしたが、カラダがいうことをきかない。
「シロ・・・チョー・・・」
崩れ落ちそうな視界の中に、いつの間にか、心配そうに覗き込む高瀬がうつる。
「祐介様、帰りましょう…」
そう言ってひざまずき祐介に手を差し伸べる。
「高瀬…」
「祐介様、早く立ち上がらないと…」
「と?」
「お姫様抱っこしますよ」
祐介は慌てて立ち上がる。
そんな祐介を見て、高瀬がクスクス笑う。
「本当に可愛らしい方だ。ご自宅までお送りしますよ。」
祐介は真っ赤になって怒り出した。
車の後部座席で、グッタリとシートに身をあずけながら、祐介は夢を見ていた。
高校3年の夏、父親の葬儀で見た黒羽の凍てついた横顔。その黒羽の横で彼の精神面を支えていた夫婦。
そのふたりの前でだけは安心した表情を見せる黒羽。
---黒羽っ。だめだ。そいつに心を許しちゃだめだ。
黒羽はその夫妻に肩を抱かれながら遠くへと消えていく。
---黒羽っ。行くなっっ。
「・・・様っ。祐介様、着きましたよ。」
高瀬が祐介に声を掛ける。
祐介は息を荒くしながら起き上がる。
「はぁっ。はぁっ。」
高瀬が心配そうに祐介をみる。
祐介は呼吸を整え窓の外を見る。外には懐かしい雰囲気の一軒家があった。
「・・・黒羽んち?」
「はい。祐介様が今日お帰りになるべきところはこちらかと思いまして。」
祐介は呆然と外を眺めている。
「だめだ…。高瀬、車を。車を出せ。今、黒羽には、会えない…。」
祐介は黒羽の家から目を離せないまま、まるで何かに怯えるかのように、フルフルと首を横に小刻みに振る。
「しょうがない方ですね。」
高瀬はそう言って車を降り、祐介が座っている横のドアを開けた。
そして背中と膝の後ろに手を差し込むと、そのまま抱き上げた。
「ちょっ。なっっ。やめろっ。」
祐介は暴れて抵抗する。
「暴れるとキスしますよ。」
祐介の動きがピタっととまる。
「ちゃんと黒羽んちに行くからっ。おろせっ。」
高瀬はニコッと笑い「残念ですね」と言って祐介をおろした。
その時、玄関の引き戸がガラガラっと開き、春奈が駆け寄ってくる。
「祐介先生っ」
春奈はそのまま祐介に抱きついた。
「先生っ。祐介先生っっ。」
春奈が泣きじゃくる。
「春奈・・・。」
困ったような照れ臭いような顔をして、春奈の頭をポンポンと叩く。
横にはいつの間にか黒羽が立っていて、祐介と春奈を抱え込むように抱きしめる。
「おかえり。祐介。」
「・・・ただいま。」
祐介は照れ臭そうに下を向きながら答える。
「バカ兄貴。」
黒羽とは逆の方から声をかけられ顔をあげると涼介の顔があった。涼介も3人を抱え込むように抱きしめる。
涼介が静かにクチを開く。その声は少し震えているようも聞こえた。
「心配したんだぞ。」
「・・・ごめん」
「なんで俺に言ってくれなかったんだ?」
「・・・ごめん。」
祐介の正面から抱きついている春奈の頬に雫がおちる。
祐介は涙をこらえることができなかった。
「ごめ…。本当に、ごめん…俺、お前の背負っていたものとか、全然知らなくて、勝手に妬んで…。勝手にいじけて…。」
涼介の3人を抱きしめる腕にチカラが入る。
「兄貴…。俺の方こそ謝らなければいけない。あの頃の俺は、家族も信じられなくって…。1人で背を向けていた…。そしてすべてに諦めていた。あの時、ちゃんと話していれば綿貫の好きにはさせなかっただろうし、兄貴が今、命を削る事も無かったんだ…。すまん…。」
祐介は黒羽と涼介の腕に手を添え、春奈の頭に頬をつけた。
祐介がずっと欲しかった自分の居場所が、そこにあった。
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