淫猥病棟#68～バーボンと潤んだ瞳～

　
　
祐介と春奈は風呂と食事を終え、部屋で浴衣でくつろいでいた。

すると程なくして、フロントから「叶が訪ねてきた」と連絡が入る。

祐介たちがロビーに行くと、叶はソファから立ち上がって手を挙げた。

「ゆっくりしてるところすみませんね。」

叶はにっこり笑った。

「はい。これ、今日撮ったヤツと、そのデータね。ほんと今日はありがとう。助かったよ。」

角封筒を受け取りながら祐介と春奈が叶につられて笑う。

「うちの西がいい仕事をしたって満足してたよ。」

叶が意味ありげにニコッと笑うが、本人たちは全く気がつかない。

「じゃあ、俺たちこれから移動なんで。ほんとありがとね。祐介くん、モデルになりたかったらいつでも声をかけて。待ってるよ。じゃあっ」

そう言って慌ただしく帰って行った。

「忙しい人ですね。」

祐介も笑って同意した。


春奈は封筒の中を覗こうとすると、祐介がそれを制止する。

「いや、さすがにはずかしいからさ、旅行が終わってから俺のいないところでみてくれない？」

その恥ずかしがる様子がよほど楽しかったのか、春奈はコロコロと笑う。








「いつまで笑ってんだよ・・・」

フロントがある建屋にバーがある事に気がつき、２人はそこで酒を呑んでいた。

「だって、なんか照れていて可愛かったんです。」

「かわいいって、３０過ぎたオトコに言う言葉かよ。」

春奈はふふふと笑う。

「だって、今も耳が赤いですよ。」

「これは酒を呑んでいるからであってだな。」

祐介が何を言っても、春奈は笑っている。

－－－もう、いいよ。そう言う事で。

そう思い、祐介は目の前にあるスコッチをくいっと飲み干した。


春奈がいったん席を外し戻ってくると、祐介の隣に見知らぬ女が座っていて、祐介にしなだれかかっている。

－－－何？あれ？！

春奈が見ている事にオンナは気がつくと、春奈のほうを見ながら、自分が座っているほうとは逆側の祐介の肩に手を回す。

そしてやはり春奈を意識しながら祐介の耳元で囁いている。

－－－祐介先生の腕に、胸があたってるっ。

春奈はモヤモヤしながら、祐介の隣の席に座った。

「あ、おかえり。」

祐介が声をかけたが、春奈は返事もせず、目の前の酒が入ったグラスをがしっと掴んだ。

「あっ。それ俺のバーボ・・・」

声をかけたが間に合わず、春奈は一気に飲み干してしまった。

途端に顔があかくなり、そして真っ青になる。

「ちょっ。春奈っ」

「・・・・きもち・・・・わるい・・・」

前にかがみこもうとする春奈を支え、祐介はバーを後にした。

部屋に戻ると、ベッドに春奈を寝かせる。

「水持ってくる。」

部屋を出て行こうとする祐介の腕を春奈が掴む。

咄嗟のことだったので、バランスを失って春奈の上に倒れこんでしまった。

「危ないなっ。潰したらどうするんだよっ。」

祐介はカラダを起こし、春奈のほうを向く。

酒のせいなのか、それとも違う原因なのか、春奈の目が潤んでいた。

祐介は思わず顔を近づけようとするが、ハッとなり体勢を戻した。

－－－祐介先生？なんで？

「祐介先生、私のことキライになっちゃったんですか？」

目を潤ませながら言う春奈を祐介はただ見下ろしていた。

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