淫猥病棟#116~余生を埋めるモノ~
春奈は病院長室を出ると、第一外科のナースステーションに入った。
「春奈ぁっ。」
先輩看護師達が、春奈を取り囲む。
みんなが口を揃えてよかったと言ってくれた。
「葛西さん。」
そこには私服姿の福田が立っていた。
「師長、お見舞いに来てくださってありがとうございました。」
福田はふふっと笑って答えた。
「もう、師長じゃないわよ?」
「え?」
「今日付でここを辞めたの。」
福田は晴れ晴れとした顔で言った。
春奈と福田はある病室に向かって廊下を歩いていた。
「お辞めになったのは、看護に専念するためですか?」
春奈が聞くと、福田はニコッと笑ってうなずいた。
「でもね、まだ、あの人には言っていないのよ。」
春奈が驚いた顔をすると、福田は面白そうに笑いながら続けた。
「押しかけ女房よ。頼子の後は私が面倒をみなくって、誰がみるっていうのよね。何年かかっても、認めさせるわっ。」
そう言って目的の個室のドアを開ける。
ドアを開けると、元気な声がかかった。
「よお、春奈チャン」
ベッドの上で座ってる田代が手を上げ笑いながら春奈を迎えた。
「お加減はいかがですか?」
「んー。すこぶる快調だね。足が動かないこと以外は、な。」
以前田代がふと漏らした言葉。先が短いという言葉がなにか病気をさしているものではないか?そう思っていた春奈の予感は正しかった。
田代は徐々に筋肉に電気が通らなくなる難病に侵されていた。現代医学では手の施しようがなかった。
「年寄りだからね。病気の進行が遅くってさ。いいんだか、悪いんだか。」
そういう田代の耳たぶをつまんで引っ張り上げる福田がいた。
「いてててててっ。なにすんだ、師長っ」
「もう、師長じゃないので、ちゃんと名前で読んでくださいっ。」
「・・・・え?」
「あなたがイヤだと言っても、私はどこまでもついていきます。だから、全ての時間を、あなたに捧げます。もらってやってください。」
春奈はそっと病室から出る。
「馬鹿だ。お前は、馬鹿だな。こんな先の短いやつにお前をもらえだなんて。」
「まだ、短いって、決まったわけじゃありません。医学は日々進歩してるんです。」
田代は目をつぶり、大きく息を吐いた。
そして目をゆっくりと開けると、ニカッと笑って手を広げる。
「京子。来い。」
福田が涙を浮かべる。
「シロチョー・・・」
田代が口の端をくいっとあげる。
「おいおい、自分は名前を呼ばせておいて、俺はシロチョーかよ?もうセンター長でもなんでもないぜ?」
「は・・・じめさん・・・」
福田が田代の胸に飛び込んだ。
「俺の余生を、お前で埋めてくれ。」
- 関連記事
-
- 淫猥病棟#118(完)~幸せのカタチ~
- 淫猥病棟#117~サヨナラ~
- 淫猥病棟#116~余生を埋めるモノ~
- 淫猥病棟#115~一生をかけて~
- 淫猥病棟#114~言葉は要らない~
←お礼ページ始めました♪
FC2ブログランキングに参加しています よかったら「つん」ってしてね♪ |
にほんブログ村ランキング(愛欲小説)にも参加 しています。押してもらえると小躍りします♪♪ |
人気ブログランキング(官能小説)に復帰でき ました♪押してもらえると跳ねて喜びます♪♪ |
官能小説.comのランキングに参加してみました♪ よかったらこちらもクリックしてみてください♪♪ |
官能文書わーるどのランキングに参加してみました♪ よかったらこちらもクリックしてみてください♪♪ |
いつも応援してくださってありがとうございます!!みんな優しくって大好きですっ
ささやかなお願い:
当ブログには「inポイントを稼ぐための騙しリンク」や「PVを稼ぐための意味の無い大量の空白行」はありません。
皆さんの愛(クリックや閲覧)だけで成り立っています。もし「しょうがねぇな、少しは応援してやるか」という気持ちになられましたら、バンバンクリックしていただけると泣いて喜びます。
当ブログには「inポイントを稼ぐための騙しリンク」や「PVを稼ぐための意味の無い大量の空白行」はありません。
皆さんの愛(クリックや閲覧)だけで成り立っています。もし「しょうがねぇな、少しは応援してやるか」という気持ちになられましたら、バンバンクリックしていただけると泣いて喜びます。
- 淫猥病棟#118(完)~幸せのカタチ~(2013.10.12)
- 淫猥病棟#117~サヨナラ~(2013.10.11)
- 淫猥病棟#116~余生を埋めるモノ~(2013.10.10)
- 淫猥病棟#115~一生をかけて~(2013.10.09)
- 淫猥病棟#114~言葉は要らない~(2013.10.08)